PFFアワード最大の魅力は“よくわからないけど、何かがある”こと
荒木ディレクターが語る通り、今年上映される17作品もジャンルや上映時間、扱う題材はバラバラだ。しかし、時間と手間をかけて選ばれた17作品は、一般の映画館で上映されている作品にはないテイストや作り手の熱が感じられる。
「PFFはどのような作品を求めていますというお題は何もないですし、時間をふくめ規制は何もないわけですから、本当に純粋に何かをぶつけてくる人が勝つ映画祭だと思います。一番大切なのは“よくわからないけど、何かがある”ってこと(笑)。それを誰かが発見して、かたちあるものにしていく。それがPFFなんだと思います」
だからこそ、PFFは今年も東京・京橋の国立映画アーカイブで実際に観客が集まって、同じスクリーンで作品に向き合うことにこだわった。単に映画を集めてオンラインで鑑賞することはできる。人気作品を集めて上映することもできる。でもそれを“映画祭”と呼んでいいのだろうか?
「同じものを同じ場所で一緒に観る。それをつくった人と語ることができる。その作品を素晴らしいと思った人がいた時に、作り手と観客がお互いの存在を感じる。つまり“世の中、そんなに捨てたもんじゃない”っていうか、自分は“ひとりじゃない”っていう経験を積み重ねていかないと人間は弱くなっていくので、映画祭は生きる力を与える場所だと思っているんです。
それはもしかしたら映画じゃなくてもいいのかもしれないですけど、私たちは映画は最も手間のかかった創作物だと思っているから映画祭をやっているだけで、世の中のイベントをやっている人はすべて同じ気持ちだと思います。
人は自分以外の誰かの存在によって変化していくわけですし、生涯にわたって変化し続けないと創作はできない。映画祭の“何かを動かす”機能はとても大きいので、自分はひとりじゃない、自分はまだまだ小さい存在なんだって思える場所があるのはすごく大事だと思うんです」