稽古場で「一番わかってる」池田成志
――稽古場のようすはどうですか?
宮藤 今回初めて稽古場にずっといてみて、これを毎回やってるんだと思うと、本当に河原さんはえらいなあって思いました。とにかくすごく早いんですよ。
河原 稽古がはじまって4日間くらいで一応1場を全部やりましたもんね。稽古場にせっかちが多いから。
宮藤 全員せっかちなんですよね。作中では古田さんがせっかちという設定なんですけど、実は3人とも……。
河原 芝居をよく知ってる分、せっかちなんですよ。特に成志さん(笑)。
宮藤 そう。脚本を書いた僕以上に解釈を語ってくれて「なるほどなるほど」と思ったり、「うーん、そのとおりやらなきゃダメかなあ」ってなったり。
河原 もちろん、助けられることも多いんですけどね。
宮藤 山本美月さんとか、あの稽古場に戸惑ってると思うなあ。よくやってくれますよね。
河原 ですね。美月ちゃんに取材したら困惑の言葉ばっかりだと思う(笑)。生瀬さんは普段後輩とか周りにもアドバイスされる先輩だと思うんですが、この現場では成志さんが先頭を切ってくれてるので、今のところ静観というか、粛々と役に徹してくださってる。
宮藤 古田さんも見せ方、ビジュアル的な部分はアドバイスをくれるけど、芝居の内容に関しては何も言わないし。
――成志さんの存在感が大きいんですね。
宮藤 だって成志さん、台本の初稿を送った時点で熱がすごかったです。次の日に返ってきたLINEが長すぎて、画面にぜんぶ入り切らなくて。読んでる途中で寝落ちしちゃったくらい(笑)。生瀬さんは短文で「読みまして面白かったです」と返してくれて、古田さんはそもそもLINEやってないし。だからグループLINEからして、成志さんの独壇場なんですよ。
河原 本当にすごいよなあ……。ただ、とにかく納得のいったものにしたいっていう思いが強い先輩だから。
宮藤 そうなんです。本当にありがたい。
稽古場で3人を焚きつける脚本家の存在
――「ねずみの三銃士」シリーズでは初めて、宮藤さんご自身も出演されますね。
宮藤 今回は生瀬さんが還暦になる歳だから、「ねずみの三銃士」として最後の公演になるだろうと言われてたんです。話が進む中で「宮藤、出ればいいじゃん」と言われたときに、最後だったら出たいな、と思ったんですよ。これまでは毎回本番の事件とか旅公演のハプニングとか、面白かった話を後から聞かされるばっかりで、羨ましかったのもあって。
河原 生瀬さん、還暦感ないですけどね。
宮藤 全くないですよ、いま稽古場で見てても。絶対最後じゃない気がする(笑)。
河原 そうだよねえ。「これが最後」感が全くないもん。
――河原さんの演出を宮藤さんが受けるのは初めてですか?
宮藤 はい。そもそも自分の脚本だけど演出は他の人で、出演だけするという立場がはじめてなんですよ。河原さんは僕の書くものの“不親切”な部分をわかるようにしてくれるし、僕の脚本をうまく演出してくれるという絶対の信頼はある。だから役としての見え方の心配は全くしていないんです。ただ、稽古場での居方、身の置きどころがまだ見つけられてない。
河原 僕も宮藤さんが稽古場にいるってどんな感じだろう? と思っていましたけど、「演出します」ってスイッチが入ると気にならずフラットにできていますね。それでいてわからないところはすぐ聞けるし。いちばんありがたいのは、三銃士に面白くハッパをかけてくれることですね。
――というのは?
河原 「このシーン、無駄にカロリー高くやったほうが面白くなるな」っていうところをあえて「宮藤さんから言ってもらっていいですか」ってちょこちょこお願いするんです。
宮藤 3人ともうまいから、多少加減した状態でも充分面白いんですよ。そこを「もうちょっとやったほうがいいと思いますよ? 前ならもっとやってたと思いますけど」って。
河原 そうするとみんな、「宮藤~~~!!」って言いながら、結局すごく嬉しそうにやってくれる。そんな意味でも書いている本人がいてくれて、ものすごく助かっています。