『泣く子はいねぇが』 © 2020 「泣く子はいねぇが」製作委員会

あんな気迫のある吉岡さんは見たことがない!

――おふたりが一緒のシーンは最初どこから撮影したんですか?

吉岡 冒頭のシーンからです。胃が痛くなりましたね(笑)。

仲野 心休まるシーンがひとつもなかったね。

吉岡 ない! 本当になかった。だから、最初はもう少し愛情表現ができるシーンがあったらいいのにって思ってましたもん。これで本当に大丈夫なのかな~?って思ったぐらい夫婦関係が冷めきってましたね。

仲野 いや、本当に殺伐としていた。普段あまり会わないし、久しぶりに会ったから近況とか話したかったんだけど、シーンがシーンなんで緊張感がハンパなくて。

吉岡 とても、そんな気持ちにはなれなかった。

仲野 でも、僕、初日のあのシーンで吉岡さんと向き合った時に、ウワッ、ことね、強!って思って(笑)。たすくとことねの関係性ももちろんあるけど、それだけではない気迫を吉岡さんから僕は勝手に感じたんです。それが嬉しくて。

俺も当然、気合いを入れて臨んではいるんだけど、吉岡さんはたすくが圧倒的に敵わないって思わせられる佇まいでそこにいてくれた。そこには母としての覚悟や女性の強さ、儚さも感じられて、そういったものを孕んだ状態で現場に臨んでくれていたから、本当に“ありがとう”って気持ちでいっぱいになりました。

吉岡 嬉しいですね~。でも、映画を観た関係者の男性陣には「めちゃくちゃ怖かった」って言われるんですよね。

仲野 僕もあんな吉岡里帆は見たことがなかった。それは、この映画を見た人はみんな思うでしょうね。勝手な思い込みかもしれないけど、パブリック・イメージの吉岡さんはこの映画にはいない。それをみんなに知って欲しい(笑)。

吉岡 めっちゃ嬉しい。私もやっぱりプレッシャーを感じながら現場に行っていたし、特にあそこはたすくに影響を与えなければいけない軸になるシーン。

だから相当悩みながら臨んだし、悩みすぎて頭がはち切れそうになるぐらい熱くなってたんです。

でも、太賀くんは本当にその役と場所に馴染んでいて。それまでそんなに悩んでいたのに、現場でいちばん最初に感じたのはそのことでした(笑)。

吉岡里帆、仲野太賀 撮影:源賀津己

監督と太賀くんはお互いの愛がぶつかり合っているのを感じた

――佐藤監督がたすく役に最初から太賀さんを想定されていたから、それだけフィットしたのかもしれないですね。

仲野 監督の意図や想いは分からないけど、監督とはけっこうディスカッションしましたからね。愛し合ってるカップルみたいに(笑)。

吉岡 もう、愛し合い過ぎなんですよ、本当に(笑)。でも、そう思うぐらい、監督は太賀くんのことを大事に思っていらっしゃるなと思って。ふたりの仲のよさを見せつけられちゃったな~みたいな。

仲野 そんなことないんじゃないですか(笑)。

吉岡 いや、そんなことあると思う!

仲野 嘘~!(笑)

吉岡 本当!(笑)お互いの作品や芝居への愛がぶつがり合っているのをすごく感じました。

仲野 よくないですね~。

吉岡 そんなことない。それがすごいよかったし、ふたりを見ていて、この作品は絶対に上手く行くという予感がしたから。

仲野 僕らはただ真面目に芝居のディスカッションをしていただけなんだけど、周りから見たら、ふたりのたすくらしさが見え隠れしていたのかもしれないし、お互いに甘え合っていたのかもしれないっていま気づいた(笑)。

吉岡 確かに、ふたりの性格がちゃんと混ざり合っているのかも。相性がいいんでしょうね。水と油のように分離せず、馴染んでいく……溶け合っていく感じがしました。初めての経験でしたね(笑)。

仲野 恥ずかしいですね(笑)。