立川志らく/写真:産経新聞社提供

TVで全国区の知名度を獲得した反面「落語できるの?」なんて言われる

そのバトンタッチから10年。今や、年末のよみうりホール公演は、立川志らくの定番公演になった。

「毎年末、この会で欠かさず「芝浜」を高座にかけているわけではありませんが、今年は「芝浜」をやります。そう決めた理由は、自分がTVにたくさん出るようになったから」

TVで全国区の知名度を獲得した反面、立川志らくの落語をまったく知らない人もまた、増えた。

「あいつ落語できんのか、とか、30何年間落語やってきて、やたら言われるんですよ。気にする必要はないんだけれども、これがわたしの本業だ、やりたいのはこれなんだ、落語を辞めたわけでも何でもないということを、改めて伝えたい。

それはまた、より多くの落語を知らない人に来てもらって、落語のファンを広げるという意味でも、絶好のチャンス。

「グッと!ラック」という自分のホームグラウンドの番組を持つことができた結果、落語に触れてない人がたくさん来る可能性がある。そこで「芝浜」をかけるというのは、意味があることだと思ったんです」

『グッとラック!』がはじまって以来、「月曜日から金曜日まで、夜の10時過ぎには寝て朝5時に起きる。芸人にあるまじき規則正しい生活」と笑うが、では、その規則正しい新生活は、芸人の人生にとって、どんな肥しになっているのだろうか。

「かつて談志が言った言葉を思い出します。談志は立川流を作って、寄席に出なくなって、ひとつだけ後悔があると言ったことがある。その後悔とは、今ある出来事をタイムリーにその場でしゃべることができないということ。

寄席があると、その日の夕方に起きた事件を、その日の夜の8時過ぎの出番で「おれはこう思っているんだ」と話すことができた。そのことに関しては寄席っていうのはありがたかったな、と談志は言っていた。

わたしは、月曜から金曜まで毎日ずーっと、それも『グッと!ラック』と『ひるおび!』のふたつの番組でしゃべることができる。これは芸人にとって一番プラスじゃないかと。

もちろん、言いたいことが何でも言えるわけじゃない。みんな一所懸命がんばりましょう、みたいな、芸人としてはもっとも恥ずかしくて言えないことを言わなければいけないときもある。そのマイナスはあるけど、でも、ありがたい環境です」

「芝浜」プラスもう1席はもちろんのこと、当日、マクラで志らくが何を話すか、コロナ禍の1年間、ニュースの現場にいつづけてきた落語家の、切れ味鋭い2020年回顧を期待しても、裏切られることはないはずだ。

【後編に続く】

公演情報

「2020 今年最後の立川志らく独演会」(第10回)
12月17日(木)18:00 開演 (17:15 開場)
会場:有楽町よみうりホール (東京都)
全席指定4500円(税込)

【動画配信】今年最後の立川志らく独演会(第10回)
【ライブ配信】12月17日(木)18:00開演(17:30開場)
【アーカイブ配信期間】公演終了後~12月31日(木)18:00
視聴券1500円(税込)