浦井健治
フォトギャラリー【写真4枚】浦井健治 芸能活動20周年記念コンサート開催決定「こんなときだからこそ歌でつながりたい」
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2000年、特撮テレビドラマ『仮面ライダークウガ』の敵役として鮮烈なデビューを飾った浦井健治。その後、『エリザベート』、『マイ・フェア・レディ』、『アルジャーノンに花束を』などの名作ミュージカルに次々と出演を果たし、今や日本ミュージカル界を支える名優にその名を連ねるまでとなった。

そんな浦井健治がデビュー20周年を記念して、2枚目となるソロアルバム『Piece』を3月24日に発売。アルバム収録曲をひっさげてのソロコンサート「浦井健治20th Anniversary Concert ~Piece~」を開催することが決定した。

待望の2ndアルバムの発売直後、その心境を取材陣の前で語った。

コロナ禍で観劇できない人にもメッセージを届けたい

浦井健治

─デビュー20周年を迎えた心境をお聞かせください

浦井 20年の間には、いろんな出会いがあって、とても充実しているなぁという思いが強いですね。以前、池畑慎之介(ピーター)さんに「10年続いたら本物」と言われたことがあったんですけど、それも2回まわって、見える景色もすごく変わりました。やはり20年間やらせていただくことは並大抵のことではなく、たくさんの方のご助力と叱咤とアドバイスがないと続かない。自分は何もできないちっぽけな存在だと知った20年でしたし、お芝居や歌の深さに気づかせてもらえた20年だったと思います。ここからまた10年、自分がどう変わっていくのかがますます楽しみです。

─20周年を記念して発売された2ndアルバム『Piece』に込めた想いとは?

浦井 このコロナ禍、なかなか人と人とが繋がりあうことが難しくなっていますよね。緊急事態宣言は解除されましたが、人と会うこと、一緒に食事をすること、マスクを外して笑いあうこともできないんです。演劇界もとても混乱しています。上演するのも観劇をするのも命がけ。「観にいけなかったけど、楽しかったようですね。応援しています」そんなお客さまの声を目の当たりにして、僕はもうやるせない気持ちでいっぱいで…。

こんな状況の中、僕になにができるかなと考えたときに、歌声を届けることの大切さをすごく感じました。歌声は舞台を観に行かないと選択せざるを得なかった人にも届けられるんです。

タイトルの『Piece』は、パズルのピースであり、ダブルミーニングとして平和のピースという意味が込められています。僕にとって歌はつながり。僕はミュージカル俳優ですが、歌声を通じて、明日への希望や勇気、元気を届けられるようなアルバムを作りたいとお願いをしました。すごく愛のあるアルバムに仕上がったと思います。

スタッフ、ミュージシャン一丸となってこだわりを詰め込みました

浦井健治

─浦井さんが出演したミュージカルナンバーである『デスノート THE MUSICAL」の楽曲「ゲームの始まり」などの他、『モーツァルト!』からの「星から降る金」など、ご自身が演じていないミュージカル作品の曲やカバー曲、そしてオリジナルも3曲も収録された充実した内容になっています。どのように選曲をされたのでしょうか?

浦井 選曲、そして曲順も含めて、このアルバムがラストのオリジナル曲「Piece of Peace」に繋がる一つの作品として考えて、メッセージが一貫したものになるよう、みんなで仕上げました。ファーストアルバムの時とはまた違う、今回はこんな時代だからこそ、制作陣、ミュージシャンが一緒になって技と知恵を出し合い、みんなで伝えたいことを伝えようというアルバムに仕上げたかったんです。

1曲目のミュージカル『笑う男The Eternal Love -永遠の愛-』のナンバー「目を開いて」は、「人間にとって何が大切ですか?目を開いてください」と問いかける楽曲です。それを1曲目から持ってきたのは覚悟ですね。4曲目の「星から降る金」は、僕が出演していないミュージカル『モーツァルト!』の楽曲ですが、観劇させていただいたときに物語の要となる名曲だと感じました。本来はヴァルトシュテッテン男爵夫人が歌うナンバーですが、自分が出演していない作品だからこそ自由に発想を広げて、今回は歌詞の中に出てくる王子様として歌わせてもらいました。

─全体的に傷ついたものの楽曲が多いような気がしますが?

浦井 それは意図したものではなく、歌いたい曲をチョイスしていった結果です。選曲の最中も、それを自分が導いているのは不思議に感じていました。きっと、今だからこそ、傷を負ってもそれでも前を向いていこう、とメッセージとして伝えたかったんだと思います。後ろ向きになってしまう日々や悲しいことがあっても、元気に前向きに、気持ちを新たに、一日一日を楽しんで「ひとつずつ笑顔になることを見つけて歩んでいこう」という気持ちがちりばめられていて、それがパズルのピースになっているというのが、今回のアルバムです。

─カバー曲として20年前のヒットナンバーであるKiroroさんの「Best Friend」とCHEMISTRYさんの「PIECES OF A DREAM」が収録されていますが、どのような思いが込められているのでしょうか?

浦井 候補は他にもたくさんあったのですが、これも他の曲と同じく、今だからこそ届けたいメッセージという視点で選びました。まず「Best Friend」は「あなたの笑顔に何度助けられただろう」という歌詞に僕自身が感銘を受けた名曲です。歌うのは難しく、やはりKiroroさんってすごいなと思いましたね。「PIECES OF A DREAM」は、オリジナル曲「Keep on Smiling」へと続く楽曲として、より自然な流れになるように選びました。ハモリも僕が担当したので収録はかなり時間がかかりました。

今回、全11曲あるのですが、実は5日間で収録を終えまして、タイトなスケジュールの中、制作陣が寛大な心で僕のわがままを許してくださったおかげで、いろんなトライができたことに感謝しています。

─ちなみにわがままとは?

浦井 「この曲、もう一回録り直していいですか?」と別日に言ったり、「この1音、もう一回やらせてもらえますか?」と1音だけ何度もやり直すとか(笑)

─オリジナル曲も素晴らしく、ひとりのシンガーとしての可能性も感じられます

浦井 20年前には、まさかソロアルバムを出させていただくなんて思ってもみませんでしたし、しかもソロコンサートをやらせていただけるなんて夢にも思いませんでした。それが演劇、ミュージカルにかかわらせていただく中で実現に至って、自分の中ではお芝居と歌は別箇だったものが、表現することの意味として一緒なんだと思えるようになりました。伝える手段や、お客様との掛け合いにおいても同じもので、エンターテインメントの根底であると気づいたんです。歌うことって素晴らしいなって気づけたことで、自分の中でも変換期をむかえたと実感しています。

さらに「やる気が出ました」「元気になりました」そんな声を聞くことができて、エンターテイントって必要だなと改めて思いました。自分も音楽に励まされてきましたし。またシェイクスピアの戯曲からもすごく学びました。何百年も前の戯曲なのに人類はそれを捨てずに愛して、流行りの疫病やウイルスとの戦いがあった時代も捨てなかったんです。そんなことを、最近歌っていて感じられるようになりましたね。

20周年記念コンサートを前に心境を告白

浦井健治

─そんなこだわりと強い想いの詰まったアルバムをひっさげての『浦井健治20th Anniversary Concert ~Piece~』は、どんなコンサートにしたいですか?

浦井 今回は井上芳雄さんと平方元基くんがそれぞれ昼の部、夜の部のゲストとして出演してくれます。そこで、井上芳雄さんには甘えきる。そして、平方元基くんとはふざけきる。──と、いうのはジョークですけど、ソロアルバムをひっさげてのコンサートですし、世の中がこのような状況での開催ですので、みんなに伝えられるものをちゃんと用意して「このコンサートに来てよかった」「この曲、アルバムをもう一回聴こう」と思っていただけることを願っています。そして、このコンサートに来たことで、すごく明るい気持ちになれたと思っていただけたら大成功だなと思っています。

20周年を迎え、改めて声楽のトレーニングを始めたという意欲満々の浦井健治。「声や歌の大切さに改めて気づけた今、このタイミングで歌声を届けられるのはラッキーです!」と、最後に熱い気持ちを打ち明けてくれた。

(写真・取材・文=浅水美保)