森見登美彦の小説『夜は短し歩けよ乙女』が、「ヨーロッパ企画」上田誠の脚本・演出、歌舞伎界の中村壱太郎と乃木坂46の久保史緒里のW主演で舞台化され、6月6日(日)から東京・大阪にて上演される。
“先輩”役の中村壱太郎と、“学園祭事務局長”役の白石隼也に話を聞いた。
演じても観ても楽しい“ゴチャゴチャ感”
──昨日は初めて通し稽古をやられたそうですが、いかがでしたか?
壱太郎 いやあ、もう一回やりたいですね。
白石 ははは!
壱太郎 めちゃくちゃ緊張しちゃって。「春」「夏」「秋」「冬」と物語が進んでいくのですが、あっという間に「冬」になった気がしました。
僕が演じる“先輩”は、「冬」に布団の中にいるシーンがあるんですけど、布団の中でずーっと反省していました。
白石 (笑)。でもまだ段取りの段階で、お芝居の演出がついていないからさ。
──お芝居の手前の段階だったんですね。
白石 はい。ただこの座組は、熟練の舞台俳優の方々がいらっしゃるので、「この短期間で!?」というクオリティで横にいてくださってなんとかできちゃったっていう感じでした。皆さんすごかったよね。
壱太郎 すごいですよ……。昨日はさらにひとつギアが上がっていた気もしました。それに圧倒されつつ、感じることの多い時間でしたね。
──この作品は次々とシーンも変わりますし、描かれていることも幻想的ですし、やることが多そうだなと想像しています。
白石 やることたくさんありますよ! 主演のおふたり以外のキャストは本役以外に2~3役ありますし、セットも出演者が動かしますし、途中とんでもないテンポ感でいくところもありますしね。
これをまとめていく作業ってとても難しいだろうと思うんですけど、でも完璧にやり切ったら、すごいショーになりそうだなという気配を昨日感じました。
壱太郎 ほんとそうだね。この作品って、この作品のポスターが醸し出している通りのゴチャゴチャ感がある。キャストもいろんなジャンルから集まっていますしね。そのゴチャゴチャ感が観ていても演じていても楽しいところなので。
──原作小説は独特なムードがありますが、それは舞台版でも同じですか?
壱太郎 言葉遣いは森見さんの世界感そのままですよ。だけどよりワンダーランド感が増してると思います。そこが素敵なところ。生の舞台でやるからこその空間が広がるんじゃないかなと思います。
白石 いろんなものがあの手この手で具現化されているもんね。
玉置玲央さんがいろんな役「やりたい!」って(笑)
──ちなみにSNSで作・演出の上田誠さんは「巨大感情絵巻」とおっしゃっていました。
壱太郎 すごい! そうだと思う。
白石 まさにそんな感じです。いろんな感情が次々と出てくるから。お客様もどこに目を向けていいかわからないと思いますよ。まず登場キャラクターの数からすごいですし。
壱太郎 しかも「この人は重要な登場人物なのかな」と思ってもそんなことなかったりするし(笑)。一回観ただけじゃ気付けないことが多々あって、何度も観たくなる作品になるんじゃないかなと思います。
──衣裳が150着あるという情報をもらいました。
壱太郎 150着!? うそでしょ!? でもその中にはきっと5秒くらいしか出ない衣裳もあるよね。
白石 あるね(笑)。
──白石さんは何役も演じていかがですか?
白石 楽しいし、難しいです。初めてやります。
壱太郎 僕は自分の役しか演じないので、「みんな大変そうだな」と思いつつも、「ちょっと面白そう」という気持ちにもなるよ。
白石 大変は大変だよ。でも稽古場で隣の席が玉置(玲央)さんでさ、いろんな役「やりたい!やりたい!」って感じなのよ。俺はまだ自分の役でいっぱいいっぱいだから、できればやりたくないんだけど……(笑)
壱太郎 はは!
白石 隣の席で「やりたい!」って言うからさ、「僕もじゃあ……」って感じでやっちゃう(笑)。
壱太郎 (笑)。玉置さんすごいもんね。別のお仕事でお稽古に来られない方の代役が必要な時とか、ほぼほぼ玉置さんが代役で立ってくれる。
白石 尾上さんもそうだしね。今回は、演劇が好きで好きでしょうがない人たちの集まりって感じ。僕自身、これまであまり共演したことがないタイプの人たちなので、すごく刺激を受けています。