弱いところを見せるようになったメリオダスに寄り添えた

梶裕貴 撮影:稲澤朝博

──あらためて、梶さんにとっての『七つの大罪』とはどんな作品でしたか?

約7年という長い時間をメリオダスと共に生きてきたので……やはり感慨深いですね。

先ほどもお話したように、メリオダスというキャラクターは物語の中盤ぐらいまで、バックボーンはもちろん、今何を考えているのかさえ表に出さないミステリアスな存在だったうえ、最強の集団“七つの大罪”の団長という役割もありました。

そういった役を、当時まだまだキャリアの浅かった自分が演じるという……先輩方や後輩たちの中心に立って、ある種カリスマ性のあるキャラクターを演じるというのは、いろいろな意味でハードルを感じていましたね。すごく緊張しながら第1話のアフレコに臨んだのを覚えています。

『七つの大罪』とほぼ同じ時期、その少し前から『進撃の巨人』のアニメもスタートしていて、有難いことにそちらでも主人公役を務めさせていただいて……声優としての自分の立ち位置が大きく変化していく時期でもありました。

そんな濃厚な時間を共にしてきた『七つの大罪』という作品、そしてメリオダスというキャラクターは、やはり自分にとって、すごく大きくて大切な存在です。

『七つの大罪』 © 鈴木央・講談社/2021「劇場版 七つの大罪」製作委員会

──TVアニメと劇場版を通して、アフレコ現場で特に心を動かされたシーンはどこでしょうか?

各シリーズのクライマックスですね。中でも『七つの大罪 戒めの復活』第8話「ドルイドの聖地」で、メリオダスが封印された力を取り戻すために過去と向き合う、つらく苦しい試練に挑んだエピソードでは、愛するエリザベスを目の前で失う哀しみを何度も何度も味わったので……演じている僕もとてもつらかったです。

エリザベスの存在が、どれだけメリオダスにとって大きいのか。それが切実に伝わったドラマだったのではないかと思います。

──物語序盤のメリオダスは団長として中心に立ち、みんなを守っていましたが、中盤以降はみんなに助けられたり、弱みを見せる描写も増えた印象です。

常識で考えれば、到底どうにもできないであろうことにも「絶対にあきらめない」というメンタリティで抗い続けているメリオダスは、とてもかっこよく映りました。だからこそ……物語中盤以降、仲間たちに本音を漏らすようになったメリオダスの姿には胸が締めつけられましたね。

叫んだり涙したり……そういった弱さが垣間見えるシーンに惹かれます。隠しているはずの“不完全”が滲み出れば出るほど、人間の心は揺さぶられるのだろうな、と。

梶裕貴 撮影:稲澤朝博

──長きにわたってメリオダスたちの物語を応援してきた作品ファンの皆さんにとっても、『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』はスペシャルなギフトになりそうですね。

そうですね! 間違いなく大満足していただける内容になっているかと思います。鈴木央先生による『七つの大罪』らしい魅力が詰まっているオリジナルストーリーですから、ご覧いただいた後には、きっとまた原作を読み返し、アニメを観返したくなっているんじゃないかと思います。

今作で『七つの大罪』は幕を閉じることになりますが、僕の心の中にいつまでもメリオダスたちが生き続けるように、ご覧くださった皆さんの中にも『七つの大罪』のキャラクターたちは、永遠に在り続けるはず。ふとしたときに彼らを思い出していただき、この素敵な物語を、より多くの人たちに伝える役割を担っていただけたら幸いです。

コロナ禍でご不便も多いと思いますが、可能ならばぜひ劇場で、大きなスクリーンと迫力ある音響設備の中、ご覧いただけたらと思います。どうぞよろしくお願いします!

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劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち
2021年7月2日(金)公開

企画・編集・ライター・インタビュアー。1999年よりスポーツ、カルチャー、アート、メディカルなど、多岐にわたるジャンルにおいて、インタビューを中心に活動する。近年はアニメや声優などが中心。【雑誌】『声優男子。』『CoolVoice』ほか【WEB】『ライブドアニュース』『シネマカフェ』ほか。※アイコンイラスト by JUN OSON