デヴィッド・テナントの吹替を担当した櫻井孝宏(左)と、マイケル・シーンの吹替を担当した飛田展男(右)

コロナ禍のロックダウンで出演舞台も延期になり、ステイホームを余儀なくされている俳優のデヴィッド・テナントとマイケル・シーン。

そんな中、いつか上演できる日を目指し、ふたりはオンライン稽古を行うことに! とは言え、何もかも手探りで、稽古はいつしか喧嘩あり、裏切りありのカオスに!? 果たして、彼らの試みは上手くいくのか……?

人気英国俳優デヴィッド・テナントとマイケル・シーンが本人役を演じ、コロナ禍の悲喜こもごもを描いた疑似ドキュメンタリー風コメディドラマ『ステージド 俺たちの舞台、ステイホーム!』。

それぞれ自宅にいる彼らのビデオ通話画面を中心に物語が進行し、共演歴(『グッド・オーメンズ』)もある仲良し名優ふたりがリアルなやり取りを繰り広げる話題作がスターチャンネルで放送される。

その日本語吹替版でデヴィッドとマイケルの声を担当する櫻井孝宏と飛田展男に、作品の魅力や収録秘話などを聞いた。

フォトギャラリー櫻井孝宏&飛田展男が吹き替え!異色ドラマ『ステージド』写真をもっと見る
  • 『ステージド 俺たちの舞台、ステイホーム!』(全6話)
  • ケイト・ブランシェット(右下)、クリストフ・ヴァルツ、ウーピー・ゴールドバーグ、ヒュー・ボネヴィルらもシーズン2に登場!
  • シーズン2にはユアン・マクレガーもご本人役で登場!
  • マイケル・シーン(左)、デヴィッド・テナント(右)
  • イギリス映画ファンにはおなじみのサイモン・ペッグ(右上)、ニック・フロスト(左上)も登場

英国の人気俳優デヴィッド・テナント&マイケル・シーンを櫻井孝宏と飛田展男が演じる

マイケル・シーン(左)、デヴィッド・テナント(右)

──まずは、作品に対しての感想を聞かせてください。

櫻井 このご時世だからこそのアイデアが出発点になっていますし、ある意味開き直った内容でもあって(笑)。そこがすごく気持ちのいい作品だと思いました。

映像に映る彼らのプライベート感は、演技なのか素なのか……。どこまでが台本か、どれくらい編集しているのか、すごく気になりましたね。あの生々しさが面白いです。

飛田 ドキュメンタリーとも違い、ちょっと不思議な雰囲気の作品ですよね。個人的にはイギリスの役者さんが好きなので、デヴィッドとマイケル以外にも大勢の俳優たちが本人役で出てきて楽しかったです。

中でも、ジュディ・デンチさんの登場には驚きました。第1話でちょっとネタにしていて、「いいのかな~?」と思わせてからのご本人登場でしたから(笑)。

“ご本人登場”する大女優ジュディ・デンチ(中央)

──櫻井さんはデヴィッド・テナント、飛田さんはマイケル・シーンに対し、どんな印象を持ちましたか? 声を演じる上でこだわったことなども教えてください。

櫻井 僕の場合は、この作品の中の彼をとにかく切り取るようにしました。表情豊かで、飄々としていて、ちょっとずる賢いのに間が抜けている笑い。でも、どこか憎めない。

実際の彼がどうかは分かりませんが、その印象を声に反映させていきましたね。というより、やっているうちにそうなったと言ったほうが正しいかもしれない。口の開け方や目のギラギラした動きを見ているとつられるんです(笑)。

飛田 僕はマイケル・シーンさんの『フロスト×ニクソン』などを見ていたので、この作品の彼には驚きました。どこまでが地なのか、読みきれない(笑)。

コワモテなのかと思うと可愛らしいところがあり、ゆるっとした雰囲気の中にも緊張感があり。自分に目を向けた人の心を離さないような気迫もありますよね。そういったメリハリを、ポイントとして拾いながら演じています。

デヴィッド・テナント(右)、マイケル・シーン(右)

──実際、どのように収録を?

櫻井 収録にあたっては、「生っぽく、雑談しているようなトーンとテンションで」というディレクションがありました。作品の生々しさを、収録で表現するのが課題で。掛け合いの面白さや温度感が映像にちゃんと乗るよう、本来ならひとりずつ録るようなシーンもふたりで録っています。

だから、私がしくじるとリテイクに……(笑)。その緊張感や難しさはありますが、すごく楽しいです。

飛田 家で事前に練習はしてきますが、最終的にどんなテンポになるか、雰囲気になるかは現場次第。もちろん、映像が大前提としてありますが、スタジオでやってみないと分からないんですよね。家でやっていたときは「面白いのかな?」と思えたシーンが、ふたりでやると面白くなることもあります。

ライブ感を大事にしている作品だからこそ、結局は収録時の状況が命になってきますね。お互いに好き勝手言い合うシーンなんて、ひとつ間違えれば道連れですし(笑)。

イギリス映画ファンにはおなじみのサイモン・ペッグ(右上)、ニック・フロスト(左上)も登場

櫻井 本当にそうですね(笑)。言葉のぶつけ合いの部分って、台詞量も情報量も多いのに、内容は薄かったりして(笑)。それが面白いんですが、飛田さんはキャラをつかんだ上でのアドリブをそんな隙間にも入れてくるんです。

基本的にはぶっつけ本番の収録なので、僕がアドリブを初めて受けるのも本番。笑っちゃいそうになったりもして、ドキドキしますよ。ポイントでスッと入れてくるのがもう……、「さすがです!」という感じで。

飛田 いやいやいや。僕自身、掛け合いの面白さに対する憧れがすごくあって。最近は録音状況の関係などもあり、個別に録るスタイルが主流ですから。

でも、僕が仕事を始めた頃の吹き替えは、その画面に出ている人たちの声をみんなで一斉に録ることが多くて。コメディ映画のガヤでさえも、主演の人と一緒に録っていたんです。

櫻井 楽しそうですね!

飛田 ひとつ間違えたら大惨事ですけどね。でも、上手くいったときの気持ちよさは格別。そういったプレッシャーと熱気、ライブ感を、この作品で再び味わえている気がします。でも、櫻井さんもアドリブを入れてくるじゃない?(笑)

櫻井 本当に、ときどきです!(笑) 台本を見たとき、「ここは入れた方がいいな」と思う箇所には。でも、飛田さんほどスッとはまる感じがまだまだ実感できなくて。

飛田 いやいや、僕だってドキドキしながらやっていますよ。でも、叱られたら録り直せばいいやって。

櫻井 そうですよね! それに、吹き替えの台本自体にも結構遊び心がありますし(笑)。