ゲルダに翻弄されるゼルドリスにも注目してほしい

梶裕貴 撮影:稲澤朝博

──『劇場版 七つの大罪 光に呪われし者たち』は“最終章のその先”を描いた、鈴木央先生による描き下ろしの完全新作オリジナルストーリーです。

完結した原作では描かれていなかった部分を見事に補完してくださっているので、原作ファンの皆さんにも間違いなく楽しんでいただける内容になっていると思います。

これまでずっと戦い通しで、つらい想いもたくさんしてきた大罪の面々にとっては、まさにある種のハッピーエンド。僕自身、とてもワクワクしながら台本を読ませていただきました。

──今作でメリオダスを演じる際に意識した点などはありますか?

メリオダス個人としては、最終章からの大きな変化は特段なかったのですが、今回は彼だけではなく、弟のゼルドリス(演/梶裕貴)も終始出ずっぱり。

TVシリーズでも、メリオダスとゼルドリスのふたりを演じさせていただいたわけですが……ここまで長時間行動を共にし、ガッツリ会話するのは初めてだったので、そのあたりの声や気持ちの演じ分けは意識しましたね。

メリオダスとゼルドリス 『七つの大罪』 © 鈴木央・講談社/2021「劇場版 七つの大罪」製作委員会

他の役者さんとの組み合わせもあって、収録スケジュールは2日間に分かれていました。僕はゼルドリスのセリフを先に録って、翌日その声を聞きながらメリオダスとして掛け合いをしたわけですが……自分の声を客観的に聴いて、それに応えるのは少し不思議というか。

たぶんヒトの本能として、脳に何かしらの制限がかかるんでしょうね。混乱しました(笑)。

そういった難しさはあったものの、メリオダスとゼルドリスの共闘は本作の注目ポイントでもあるので、気持ちを切り替えてしっかり集中してお芝居しました。

──本作でのメリオダスとゼルドリスの関係性は、これまでふたりを観てきた者としても胸アツでした。

メリオダスと敵対関係にあったゼルドリス。複雑な人間ドラマがようやく落ち着いたところで本編が終わって、それらを経ての兄弟愛というものが丁寧に描かれています。

様々なハードルを乗り越えた先のふたりの姿が見られたのは感慨深かったですね。

ゲルドリスとメリオダス 『七つの大罪』 © 鈴木央・講談社/2021「劇場版 七つの大罪」製作委員会

そして、それぞれのパートナー……メリオダスとエリザベス、ゼルドリスとゲルダの愛も本作の見どころだと思っています。幸せそうにしている彼らの姿を見て、僕自身とても胸が温かくなりました。

「ゼルドリスってこんなに可愛いヤツだったんだ!」なんて新たな発見もありましたし(笑)。

まあたぶん、彼は元から可愛いヤツだったとは思うんですよね。要は「そんな自分を押し殺してでも、兄のメリオダスと戦わなければ」と頑張っていたのが、これまでのゼルドリスなわけで……。

本作ではその呪縛から解き放たれた、本来のゼルドリスがようやく出てきたんでしょう。ゲルダに翻弄される彼の様子を存分に楽しんでいただければと思います(笑)。

──ゼルドリスは本当に翻弄されていましたね(笑)。

本編では常に眉間にしわが寄っていて、ピリッとしているイメージが強かったですからね。ゲルダに甘えたような口調で喋りかけたり、子供のような仕草をしているのが微笑ましかったです。

実際に演じていても、すごく楽しいシーンでした。兄弟で愛の感じ方や伝え方は違うようですが……やっぱり、ゼルドリスの方が甘えん坊かな?(笑)

梶裕貴 撮影:稲澤朝博

──エリザベスとメリオダスの関係も、少し進化していた印象でした。

そうですね。エリザベスが本来の自分を取り戻し、より包容力が増していたように思います。本作には“ゼルドリスに対して気遣うあまり、どこか遠慮がちなメリオダスの背中をエリザベスがそっと押してあげる”ような描写があるのですが、僕はそのシーンがすごく好きで。

エリザベスの大きな愛を感じましたし、母のように包み込む(雨宮)天ちゃんの声とお芝居が本当に素敵で。横で聞いていて、「エリザベスは心の底からメリオダスを愛しているんだな」と伝わってくる音に感じました。

──本作には、原作で描かれなかった最高神(演/倉科カナ)も登場します。

「このタイミングで最高神を登場させるのか!? 央先生、恐ろしい人……!!」と思いました(笑)。原作ファンの皆さんも「最高神ってどういう存在なんだろう?」と気になっていたと思いますが……それが今回、この劇場版で登場するとは驚きでしたよね!

最高神と言うくらいですから“人間味の排除された全知全能感を持ち、同時に女神族としての美しさもある”……そんな得体の知れない圧倒的なものを僕は原作からイメージしていましたが、まさにそれを倉科さんが素敵に表現されていて。

──さらに、原作では名前だけ出てきていた2代目妖精王のダリア(演/中村悠一)と巨人族の名工ダブズ(演/神尾晋一郎)もここで登場です。

2代目妖精王のダリア 『七つの大罪』 © 鈴木央・講談社/2021「劇場版 七つの大罪」製作委員会
巨人族の名工ダブズ 『七つの大罪』 © 鈴木央・講談社/2021「劇場版 七つの大罪」製作委員会

彼らの存在がベールに包まれたままでも、もちろん物語は幕を閉じられたのだろうと思いますが……今回の映画は、ある意味ボーナスステージのような側面もあると思うんですよね。大罪ファンへのご褒美的な(笑)。

なので、気になっていた謎のすべてが解明されるような作りになっていて、それがまた本当にすごい! 「央先生は、いつからそういった構想をお持ちだったんだろう?」と勘ぐってしまうくらい、綺麗に補完されているフィルムになっていると思います。

同時に、シリアスな展開が続いた原作の終盤と比べて、央先生作品らしいクスっと笑えるようなシーンや、愉快で痛快な描写もたくさん見られるので、「これこれ! これが『七つの大罪』!」と感じていただけるんじゃないかと思います。