『ガンダム』の生みの親である富野由悠季が手掛け、1989年から1990年に出版された小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。
起動戦士ガンダム40周年記念に加え、『機動戦士ガンダムUC』以降の宇宙世紀を描くプロジェクト「UC NexT 0100」第二弾として、約30年の時を経て映画化が決定した。
そして、主人公ハサウェイ・ノアを小野賢章が、ハサウェイに立ちはだかるレーン・エイムを斉藤壮馬が演じる。
歴史ある作品への出演。喜びと、プレッシャーも
本作への出演をオーディションで掴んだふたり。
これまでに小野は『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』、斉藤は『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』への出演経験がある。
その経験があったとしても、やはり歴史ある作品への出演には並々ならぬ喜びとプレッシャー、緊張感……複雑な思いを募らせていた。
「『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』では夢を抱く少年(ユウキ)の役で参加させていただきました。とても良い役だったのですが、すぐに毒ガスで死んでしまうのが非常に印象的で。
ガンダムシリーズに関わったのはそれのみだったこと、今回はガンダムパイロットとして参加させていただけることから、ハサウェイの役が決まったときはとても喜びを感じました。ただその喜びは一瞬で……そのあとはずっとプレッシャーとの戦いでした」(小野)
「ガンダムシリーズは長い間、多くの方から凄まじい熱量で愛されてきた作品群です。そこに自分が声優として関わらせていただけるのは素直に光栄だと思います。
同時にそれだけ多くの方の思いが繋がって『閃光のハサウェイ』が今回映像化されるわけですから、しっかりと自分の核を持ち、役に臨まなければいけないと思いました」(斉藤)
ハサウェイ・ノアの心の表現 「時間をかけて向き合った」(小野)
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』はアムロ・レイとシャア・アズナブルの最後の決戦を描いた映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)の世界観を継承した作品であり、『逆襲のシャア』で描かれた第二次ネオ・ジオン戦争から12年後の物語となっている。
『機動戦士ガンダム』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』など様々なガンダムシリーズに登場するブライト・ノアの息子であり、地球を私物化し地球の汚染を加速させ民衆を宇宙へ強制連行する政策「人狩り」を行う地球連邦政府へ抵抗すべく立ち上がった反地球連邦政府運動「マフティー」のリーダーが小野演じるハサウェイだ。
表向きは民間人「ハサウェイ・ノア」として生活し、裏ではマフティーのリーダー「マフティー・ナビーユ・エリン」として地球連邦政府高官の暗殺を目論む。
複雑な設定を持つハサウェイを演じる上で、小野は映画のもととなった小説を読み込んだという。
「台本をいただいて読んだとき、正直チンプンカンプンでした。ハサウェイは一見好青年な印象ですが、実はマフティーという別の顔を持っています。なかなか難しい役どころなので、セリフを理解しなければハサウェイを演じ切れないだろうと感じました。
そこで小説を読んでみると、ハサウェイのセリフの裏側にある気持ちや背景が丁寧に描かれていたので、それらを一つひとつかみ砕きながら台本にメモしていきました」(小野)
小野曰くハサウェイは「表向きに言っていることと、内側で思っていることが違う」という。そのため、セリフを真正面に受け取るだけでなく、その真意を探る必要があった。小野はハサウェイの持つ複雑な心境を絶妙な声のニュアンスで演じている。
「彼自身が自分の活動に絶対的な信念を持っていたら演じやすいのですが、どこかで常に迷いを持っています。マフティーの仲間といるときの言動、ハサウェイの心の中にある心境、そのすべてがバラバラで。でもそれがハサウェイなんですよ。
マフティーのリーダーとして立ち止まれない引き返せないところまできているから、悩んでいながらも悩んでいる姿を見せずに突き進んでいる印象を受けました。本当は悩んでいるけど悩んでいる姿を見せるのは違う。その微妙なニュアンスをセリフに落とし込むのが難しかったです」(小野)