ハサウェイの内面の理解を深めていったのは小野一人の力ではなかった。監督の村瀬修功と録音演出の木村絵理子を含めたスタッフと何度も話し合い、丁寧にハサウェイをつくり上げたという。
「最初はハサウェイに対し、ガンダムの主人公だし反地球連邦政府運動マフティーのリーダーとしてみんなを引っ張るカッコいい人物にしてあげたいという思いがありました。
ただ、監督たちと話し合っていく中で、ハサウェイ自身がどういう世界で誰に影響を受け、今どのような状況下にいるのか、何が正解か分からない悩みを抱えていると知りました。『青年としての揺らぎを表現してほしい』と伝えられ、ハサウェイの持つ青さ・悩みをどう表現していくかはかなり話し合いを重ねましたね」(小野)
難しい役どころと向き合っているからこそ、小野自身「役者として成長させてもらえたような気がします」とも語る。本作は三部構成となるため、今から第二部・第三部の意気込みを見せてくれた。
「これだけの大作に関わり、ものすごく時間をかけて役づくりをしたので、僕のキャリアの中でもとても貴重な経験です。一つの作品、一つの役にここまで集中して向き合う機会はなかなかないと思います。
これから二部、三部と続いていくので、ハサウェイとともに僕自身役者として磨きをかけて、深みを出していけたらと思います」(小野)」
若きパイロット、レーン・エイム 「ハサウェイとは対称的」(斉藤)
斉藤は『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の台本を初めて読んだ際、小野同様に難しさを感じつつもとても印象深かったという。趣味に読書を公言している斉藤ならではの感覚で物語の面白さが語られた。
「言葉通りの意味に解釈することだけが全てではなく、行間を感じられるような会話劇、複雑な人間模様が描かれていて。昨今このようなつくりの作品は少ないのではと、とても印象的でした。
脚本の段階からこれは面白くなりそうという予感もありましたね。文章だけで読むとよく分からないと感じる部分は映像を見てしっくり来ることも。説明し過ぎない美学のようなものを感じました。
自分で解釈して、その解釈に責任を持つことが大切になる作品だと思いました」(斉藤)
実は斉藤、当初ハサウェイのオーディションを受けていたという。結果的に小野がハサウェイ役に選ばれるのだが、「別のキャラクターでオーディションを再度受けてほしい」との声掛けが。そして、レーン・エイム役を掴んだ。
オーディション時と本番のアフレコ時には「若武者のように演じてください」とディレクションを受けたそう。
レーンは地球連邦政軍のマフティー殲滅部隊所属の若きエースパイロットであり、対マフティー用大型モビルスーツ「ペーネロペー」に搭乗し、ハサウェイの前に立ちはだかるキャラクターだ。若さと優秀さゆえに、直情的な性格である。
斉藤はレーンとハサウェイについて「対称的な人物だと思います」と話す。
「ハサウェイは複雑な迷いや揺らぎがあります。一方レーンは経験が少ないがゆえに青さがあり、だからこそ自信もある。目の前の物事に対して感情と表情と行動がほとんど合っているんですよ。
自分は優れた人間だと思っているし、疑問を抱けば包み隠さず『なぜだ?』と言います。それがレーンという人間なのだと感じています」(斉藤)