韓国音源チャートの上位常連で、2018年には地上波音楽番組『SBS人気歌謡』で、IZ*ONE、EXOという大人気アイドルを破り1位の座を獲得しているポール・キム。韓国では、多くの男性アイドルたちが彼の曲をカバーし、20代男性がこぞってカラオケで彼の曲を歌う「モテ歌職人」ともいえるバラード歌手、シンガーソングライターだ。実は、日本語ペラペラ。日本の大学に留学中に「歌手になりたい!」と一念発起し、中退して帰国。アルバイト生活を送りながら歌手を目指して大成した。本人に挙げてもらった「ポール・キムを紐解く3つのキーワード」から、その人間像に迫る。
◆キーワード1:ドラマOST
――ポール・キムさんの最初のヒット曲は、ドラマ『先にキスからしましょうか?(原題)〜ロマンスは必然に〜』のOST(オリジナルサウンドトラック)曲『Every Day, Every Moment(모든 날, 모든 순간)』(2018年)ですよね。
「そうですね。ドラマ『先にキスからしましょうか?…』は、アラフィフ男女のラブストーリーなので、依頼をいただいた時、“何で同世代のアーティストではなく、だいぶ年下の僕に?”と、意外に思ったんです。でも、“そういう意外性を期待しての依頼なのかな?”と汲み取り、引き受けることにしました。そのおかげで、ポール・キムという名前を僕の両親の友だちも知ってくれるようになりました(笑)」
――『Every Day, Every Moment』はロングヒットとなり、「韓国版ビルボード」ともいわれる「ガオンチャート」初の2年連続年間TOP 10(2018年、2019年)入りを記録。また、X1を生んだ大人気オーディション番組『PRODUCE X 101』では、ボーカルポジション評価の課題曲にも選ばれました。EXOのチェン、NCT 127のドヨンはじめ多くのアイドルがカバーし、「歌うまさんが歌う曲」、「この曲を歌えばモテる!」という曲の代表格に。この曲は難しい?
「曲自体は、難しい曲ではないと思いますよ。僕がこの曲を歌う時は、曲の中の感情を伝えるということに集中して歌っています」
――『Every Day, Every Moment』だけでなく、BTSのVが『緑色(초록빛)』、EXOのベクヒョンが『雨(비)』を歌うなど、歌うまアイドルたちがこぞってポールさんのカバーをしていますが、それらを聴いて、歌手としての新たな発見や刺激を受けることなどはあるのでしょうか。
「ありますね。彼らが歌った曲を聴くと、“僕もこうしたら良かったな”とか“こういう表現もいいな、次に試してみよう”と思うこともあります。いい勉強になります」
――アイドルだけでなく、韓国の20代男子の多くがカラオケでポール・キムさんの曲を歌いますよね。誰かが自分の曲を歌うって、どんな気持ちなのか気になります。
「最近は時世柄行けていませんが、僕は一人カラオケが好きなんです! 行くと、隣の部屋で誰かが僕の歌を歌っていることがよくあって。そんな時は、僕も同じ曲を歌います(笑)」
――本家が!
「何かありがたくて、一緒に歌いたくなっちゃう(笑)」
――20代の男性が自分の曲に共感してくれるのは、うれしいんじゃないかと思のですが。
「うれしいけれど、反面、悲しいんですよね……。僕の20代って、すごく大変だったんですよ。歌手になりたいのになれなくて、足掛かりになる事務所にも入れない。お金もないから、毎日バイトするしかなくて……。
僕はそういう自分の経験を曲にしているので、僕の曲に共感するということは、その人たちも僕と同じつらい経験をしているんじゃないかなと思っちゃう。だから、“頑張って!”という気持ちになります」