本番で内野聖陽に無視される!?

撮影:小嶋文子

――劇場版で印象に残ったシーンをお聞きしたかったのですが、やはり先ほど上がった二人の関係が始まったシーンですかね?

山本:そうですね。土砂降りでもありましたし。

磯村:ちょっと寒かったですよね。

山本:そう、寒かった。そのとき、磯村くんは次の作品のためにストイックに体づくりをしていたんですけど、その最中、結構な量の雨降らしの中で、おっさんと抱き合うみたいな(笑)。

磯村:いやいや(笑)、もうそれは大ちゃんと思って見ていますから。

山本:(笑)。もちろんそうなんだろうけど、よくよく考えるとね。だけど、今回、二人の始まりを描けたことは、今後(続編)があるにしろ、ないにしろ、二人の関係の終着点を表現できたような気がします。時系列としてはスタートですけどね。

磯村:あのシーンの前後の二人の関係については台本では触れられていなかったので、正直、気持ちの面では難しかったです。どうしてあんなことになったのかがわからないので。

ただ山本さんはがっしりされているので、抱きしめられたときはキュンとしちゃいました(笑)。すごく安心感がありました。僕も今回、劇場版であの部分が描けたことは、一番重要なポイントになったと思います。

©2021 劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 ©よしながふみ/講談社

――西島さん、内野さんも含めた4人でのシーンは、言葉上のやり取りだけでなく、その裏にある心の中のやり取りも見えてとても楽しいのですが、今回の劇場版にもありますね。

山本:航くんと賢二のバチバチを、二人(筧と小日向)がわりと包容力のある感じで見ているのが面白いですよね。そういうところを見ると、やっぱり(航や賢二より)小日向と筧さんの方が大人なんだな、と感じたりもしますね。

4人のときはわりと内野さんが、こういうことを(アドリブで)やってほしい、ってよく言うんですけど。今回もあったんですけど、それでやってみると、全然(内野が)反応しないとかもあって(笑)。

磯村:ありましたね(笑)。

山本:やり取りの最後に(磯村に)「これ、美味しい」みたいなことを言ってほしいって言ってて、テストのときは反応していたのに、本番になったらいきなり無視して。あれは面白かった(笑)。

磯村:めっちゃ無視されました(笑)。

山本:僕は傍から見ていて「この人(内野)、拾うのめんどくさくなったな」って思ってたんですけど(笑)。でももしかしたら、そのときの航くんの反応も含めて計算しているのかもしれないです。とにかく、そういうのが何ともおかしくて。賢二と航くんのやり取りは見ていてすごく面白いです。

撮影:小嶋文子

――磯村さん自身はどんな感覚で演じているのですか?

磯村:ケンちゃんとの駆け引きは目で示し合いながらいつもはやっているんですけど。ただそのとき(無反応だったとき)は、テストではちゃんと反応してくれていたのに、本番では全く無反応で。僕が大すべりしたみたいになって。「ケンちゃん、全然来ないじゃん!」って(笑)。

けど、そういうことも含めてその場で起こることを何でも楽しめるし、許される現場でした。それはすごく楽しかったし、良い経験になりました。