あえて言うならば、特別なことは何もなかった。けれど、だからこそ最高だと思えるライブだった。
いつも通りのことを変わらずに全力でパフォーマンスしてくれた湘南乃風の4人、バックセレクター(DJ)として参加しているThe BK Sound、ダンサー、そしてオーディエンス、さらにはここに来られなかったファン、全員でつくった“遊び場”がそこにはあった。
「3年ぶりだぞ、みんな元気かー!」
ツアータイトル『風伝説TOUR 2020 四方戦風〜ぶっ飛べクソアツい粋な祭り 頂け一番〜』に、“2020”とある通り、本来であれば昨年の9月にファイナルを迎えているはずだった。
新型コロナウイルス感染症拡大により一度は全日程を延期、しかしそれでも切迫した状況は変わらず、すべてのチケットの払い戻しをしてリスタートすることとなった。
ということで、約1年越しの想いが詰まった東京ガーデンシアターでのライブ、盛り上がらないわけがない。
昨年5月にリリースしたアルバム『湘南乃風〜四方戦風〜』のオープニングナンバー「不死鳥」のイントロから会場全体がトップギアの熱気に包まれた。
「3年ぶりだぞ、みんな元気かー! こんなもんじゃねーだろ! 遊ぶぞー!」とHAN-KUNがフロアを煽れば、オーディエンスは声を出せない分、ハンドタオルをちぎれんばかりに回して応える。
緩急の落差がまるでジェットコースターに乗っているような気分にさせる「GOLD」から、RED RICEの「やって来たな、俺たちの夏がー!」という掛け声とともに、湘南乃風の王道ソングとも言える「Summers」へとなだれ込む。
HAN-KUNと若旦那がセンターでシンクロした動きを披露し、RED RICEとSHOCK EYEが左右に分かれてフロアを沸かす。こうした4人の視覚的なコンビネーションを体感できるのはライブならではだ。
ディストーションの効いたヘヴィなギターサウンドとともに幕を開けたのは「四方戦風」。ヴァース部分では、4人それぞれの個性が剥き出しになったパートが独立してあり、コーラスでガッチリ噛み合うという構成は、ライブ映えするパフォーマンスもさることながら、彼らのネクストレベルへの渇望を感じさせた。