織山くんの中から湧き出る音楽を尊重したい
──主演の織山尚大さんとは「初めまして」ですよね。
先ほどビジュアル撮影で初めてお話しして、「みんなでがんばっていきましょう!」と気持ちを新たにしました。爽やかな好青年で、早く仲良くなりたいです。稽古が待ち遠しい!
──織山さんは『犬との約束』に出演するにあたってのコメントで「自分が課題としてきた歌唱力を、どんな風に板の上で表現できるか凄く楽しみです」とおっしゃっています。役柄的にもキャリア的にも、横山ジョージはベテランとして織山ダニエルをリードしていくことになりそうですが、織山さんに対してどのように稽古場で働きかけていきたいと考えていらっしゃいますか?
まず楽しんでもらいたいですね! 課題に感じていらっしゃる歌唱力について「これをやってみたら」と具体的にアドバイスすることも大切かもしれませんが、僕は織山くんの中から湧き出る音楽をいちばんに尊重したい。きっと彼にしかできない表現になるはずですし。
──織山さんだけのオリジナリティを発揮するために、何が必要なんでしょうね?
愛犬を奪われた飼い主ダニエルの心情、作品に込められたメッセージに心を寄せるほど見えてくるんじゃないでしょうか。
僕の演じる弁護士のジョージは、家族と呼べる存在を亡くしたダニエルの悲しみに突き動かされるようにしてサポートにまわる役回り。お芝居でがっつり気持ちを通わせるパートが多い僕だからこそ、ダニエルの心情がクリアに見えるようお手伝いできたら、と思っています。
──歌唱力を上げる技術やテクニックより、役や作品理解を。
ミュージカルは心に秘めた内面のエネルギーがメロディや歌詞に乗って、客席に届けられるもの。ぜひその楽しさを味わってもらいたいです。
ダニエルと愛犬の友情を目の当たりにして、僕の演じるジョージも弁護士として、人間として成長していきます。その姿を、説得力をもってお客さまにお見せできたら。
──横山さん扮するジョージは、弁護士事務所の採算度外視で理想に突き進む一面がありますね。
そうなんですよ! 彼の持つ「困っている人を助けたい」という心のあたたかさが、裁判では“弱さ”に反映されてしまう。負け続きでなかなか成果を上げられずにいる、頼りないキャラクターですね。
青木さやかさん演じる助手のスーザンに「給料を払って欲しい」「家賃すら払えない」と何度もツッコまれて(苦笑)
──見返りを求めず苦しんでいる人を救おうと邁進するジョージは、忠誠心の強い“犬”みたいな存在ですね。
理想に対する忠誠心がある、まっすぐな人物ですよね。あたたかい心で人に接する。
ダニエルが愛犬を奪われた事件は、1869年にアメリカで起こった「オールドドラム裁判」がもとになっているんですが、ジョージのポジションにいる実在の弁護士が最終弁論で語った「犬への賛辞」という演説が劇中にも登場します。