国語力や文章能力が低下するとどんな弊害がある?
——西山さんがおっしゃっているような“国語力や文章能力(思考して自分の考えをアウトプットする力)”が低下している子どもが増えている実感はありますか?
西山「いえ、数が増えているというよりは、そういったことが苦手な子どもの苦手度合いが深まっている、という印象ですね。
国語や表現することが苦手な子は、内気であるとかそういったことではなく、自分の言葉で伝える、表現するということが上手にできていないだけという感じです」
——国語力や文章能力の低下は、子どもにとってどんなデメリットがあるのでしょうか?
西山「国語力や文章能力が養われていないことは、コミュニケーションに大きく影響します。
私は先ほど話した、思考する力、自分の考えをアウトプットする力に加えて、相手の意見を聞き取る力、質問や相手の言葉に対して意見を言う力もまた、国語力や文章能力に該当すると考えています。
文章能力と聞くと、どうしても読み書きすることに対する能力という印象が強いのですが、実は国語力や文章能力はコミュニケーション能力だと考えています。
国語力や文章能力を磨かないと、コミュニケーション能力を高めることが難しくなることが多いです。自分自身の考えや意見を言うことも難しくなりますし、人との会話の中で齟齬も発生しやすくなってしまいます」
子どもの国語力を伸ばすためにベネッセ文章表現教室がやっていること
——しかし、国語力はコミュニケーション能力となると、それを実際に育む方法がなかなか思い浮かびません。ベネッセ文章表現教室ではどのように子どもの国語力の成長にアプローチしているのでしょうか?
西山「はい、文章表現教室では『考える力、書く力、伝える力』の3つにそれぞれアプローチする工程があります。
特に他の教室にはない特徴としては『伝える力』という部分ではないでしょうか。
先に話した通り、国語力は読み書きに関する能力と捉えられがちなので、文章に落とし込む力という部分までは多くの人が想像する工程だと思うのですが、文章表現教室では必ず一人一人またはグループごとでの発表の時間があります。
大人でいうところの“プレゼンテーション”に近いですね。
自分の思考を相手に伝わるように話す、相手の話を読み取り気づきを得るという2つのポイントを意識的に授業の中に取り入れています。
ただ、この授業を成功させるための大前提として、ある大切なことを子どもたちには教えています」
——つまり、子どもたちの国語力を伸ばすための大前提、ということですね。
西山「はい、いわゆる教室のグランドルールですね。『できるところまでがんばって考える』『他の子の意見を頭ごなしに否定しない』などのルールを設けています。
このルールは、子どもたちにとってよりわかりやすく自分の中に落とし込みやすい言葉で表現した“おきて”という形で存在していて、授業の最初に必ず皆で復唱するようにしています。
これは、自分自身の意見を形成するために考え抜く経験をするためと、『ここではどんな意見であれ否定されない』という、子どもの心理的安全性を確保するためです。
せっかく考え抜いた意見をからかわれたりすると、なかなか自分の考えを発しづらくなってしまいますよね。ゆえに、文章表現教室では、先生も子どもの意見を頭ごなしに否定することは絶対にしません」