子どもの夢は応援するのみ!でも夢追うパパへの娘の気持ちは複雑なようで?

山本:娘は最初「お相撲さんになりたい!」って言っていたんですよ。それから「ボートレーサーになりたい!」という時期もありました。これは、競艇場の近くに住んでいるからだと思うんですが。

小学生になって、最近は「動物の保護ができる仕事をしたい」みたいなことを言っていますね。

――お相撲さんもボートレーサーも、女子にはいまだ敷居が高い印象があって「ちょっと無理じゃない?」と言ってしまいそうですが。

山本:いや、そういうのは全くないですね。夢を否定するのは、一切してない。何かなりたいんだったら「いいね!」って言って「がんばって!」って言います。

やりたいことは何でもいいから、本当にやらせてあげたい。僕が空撮をしているから「飛んでもらいたい」とか「写真家になってもらいたい」とか、特にそうも思っていませんし。

ただ「好きなことをやってもらいたいなぁ」とは思いますね。

――では逆に娘さんは、夢を追い続けるパパのことはどんな風に思っているのでしょう?

山本:いやぁそれが、以前は何も言わなかったんですが、最近は「危ないことしないで」とか「命かけないで」とか。僕が山に行くっていうと「どこの山に行くの?」「エベレストとか絶対に行っちゃダメだよ!」って、すごい言うようになっちゃって。

というのも2022年のアフリカ最高峰・キリマンジャロの空撮は、実は2019年に実施する計画だったものが延期されているんです。

コロナの影響もあるんですが、2019年9月にエンジンテスト中に事故を起こして、2カ月近く入院したのが一番大きな原因で。

パラグライダー自体はきちんと扱えば決して危険なものではないので、その点は誤解をしていただきたくないのですが。

僕の事故についてはプロジェクトの出だしで自分だけ突っ走ってしまって、エンジンに特殊な改造をして、特殊な飛び方をしていたので。

いまとなってはあのタイミングで、安全対策を見つめ直すことができて幸運だったと思っているのですが。

家族にとってはやっぱり、心配だったんだと思います。入院中、妻と娘は不安で、いろんな話をしたんじゃないかな。

でも、飛ぶのだけはやめられない。

――ご家族には、ご家族だからこその想いがありますよね。

山本:妻は、相当苦労してます。キリマンジャロにだって、行ってもらいたくなかったでしょうね。すごいケンカになりますよ。

みんなに「すごいね!」と驚かれるパートナー、でも感謝の思いは伝えられず

山本:僕は、飛ぶのだけはやめられない。だから妻には苦労をかけてしまって申し訳ないと思いつつ、普段はすごいケンカをしちゃうんですよ。

事故った時には、離婚問題にまで発展しましたし。

――重傷だったわけですから、心配しますよね。

山本:妻はフルタイムで働いていて、家計を支えてくれています。

僕の空撮も、仕事で行くんだったらしょうがないけど、例えば『そらをとびたい』の写真とかもそうなんですけど、作品撮りというのは仕事の依頼があっていくワケじゃないので、全部自腹で行くんですよね。

そういう「いつお金になるか分からない動き」というのを、妻はすごく嫌がります。

――「いつお金になるか」の「いつ」が来るまで、空撮にかかる費用は持ち出しで、家計としては、言ってしまえば赤字ってことですよね?

山本:だからいろんなところで「奥さん、すごいね!」って言ってもらえるので、僕はその度に「そうだよなぁ」って、「もっと感謝しなきゃな」って思ってます。

――感謝の言葉は、口にして伝えていますか?

山本:いや、それはやってないですね。全然、できてないんですよ。

――それはダメだ……

山本:どうしても逆になっちゃうんですよね。「もっと空撮に行かせろ!」とか「なんで文句言うんだ?」みたいになっちゃうから。

例えば僕が「今度、作品撮りで〇〇へ行ってくる」って言うと、いい顔しなかったりとかするワケですよ。「ガソリン代かけて、お金にならないことするの?」みたいなことを言われたりする。「写真家としてなら、空撮ではなくて、飛ばない仕事を入れた方がいい」とか。

作品撮りとしての空撮が、作家活動として必要なんだっていうのは伝えていて、それについては分かってくれているとは思うんですけど。

以前は「もっと自由にやらせてくれればいいのに」って思っていたんですけど、でも周りから見たら十分自由にやらせてもらっているんだなっていうのは感じるので、ちょっと自覚して、感謝の気持ちを伝えないとなって思ってます……はい。

写真絵本『そらをとびたい』は、完成した絵本を見せたら「すごい!」って言ってくれました。

以前からサンプルを見せたりしていたので「昔に比べたらすごい良くなったね」って、こんな完成度のものができるとは思っていなかったんでしょうね、そういう意味ではすごい喜んでもらえました。

だからこそ妻のためにも、作家として撮った写真がカタチになる、これからこういったものをどんどん増やしていかなきゃ、とも思いますね。