考えること、声をあげること、行動することについて
──最後に最新の舞台公演についてお伺いします。
2023年11月、安西慎太郎さんと2人で作・演出・出演をする『響宴・「世濁声(よどみごえ)」』は、約1時間の食事の後に演目が始まるという、ちょっと大人の公演です。
どういった経緯で企画が進んだのでしょうか?
昨今、自分のいる演劇界を含めた芸能界で、時代の歪みというか「これでいいのかな、この環境は」という問題が見えてきました。
俳優である以上、個人的に戦っていかなきゃいけないとも思いますが、僕は「人にものを言う立場の人間こそ、ちゃんと人に耳を傾けるような世界であって欲しい」というのが大きなところにあって。
そのうえで実際に自分に何ができるかと考えたときに、物作りを始めねばという結論になりました。
単純に慎太郎と「2人で何か作りたいね」というのもあったんですが、前提はそんな感じです。
──まず自分で行動を起こそうと思ったんですね。
現在、海外の戦争や国内政治の現状などで、僕ら界隈の世界の拡大版のようなことも、起きているじゃないですか。なのでそこに対して作品として、ひとつ楔を打っていきたいと思ったんです。
しかし僕が作品を通してメッセージを届けるとはいえ、見てくださる皆さんが、何かをもらうだけの立場ではないとは言いたいです。
──と言うと?
『世濁声(よどみごえ)』っていうのは、その、俗世と濁世というのも掛けているんですけど、僕らが出せる声が透き通った正しい声とは思っていません。
作品の中でも言っているんですけど、自分たちが真っ白というのもおかしな話で、声をあげるのが偉いとかでもなく、「声をあげていかないといよいよヤバいんじゃないですか」っていうのを伝えたいんです。
──その危機感を感じて欲しい。
僕らが作品を通して声をあげるのは、シンプルに世の中へのフラストレーションが原因です。
ただそれを人を幸せにする何かにしなきゃいけないのが、物作りをする人の覚悟だと僕は思うので、今回の作品が出来上がりました。
この作品を見たお客さんそれぞれが、つまんないとか、うるさいとか、難しいとかでもいいので、意見を持つことで考えるきっかけになってくれたら嬉しいです。
高尚な意見を持たなければとか、的外れな意見は意味がないとか、そんなことは絶対にないので。
事実、仲のいい俳優さんにゲスト出演を頼んでいるのですが、「これってさ、こういうことかな」と予想だにしなかった解釈が飛んでくることが多々あります。
それに対しては「ぜんぜんそれでもいいです!」って返事をしているんですよ。
見たら納得すると思うのですが、僕らの世界観にそんなに限定した解釈を求めていませんので。
舞台「世濁声」(よどみごえ)
【公演日】2023年11月9日(木)~11月19日(日) ※11月14日(火)休演日
【会場】DisGOONieS
【あらすじ】
「人ならざるものは僕なのか。世界なのか」
転がる真実に人は眠り。世界もまた沈黙で答えている。
それでも僕らは信じよう。世界はまだこんなにも美しいと。
これは一つの希望が目覚める物語。
「君が思う、そして僕が思う。だからこそ君は君だし、僕は僕でいられるんだ。」
「人の記憶を思うんだ。それがいつか心になる」
記憶を持たぬ男。全てを知る男。
いつかの時、どこかの場所で二人で織りなす、真実の為の与太話。
これは今こそあなたの未来へ届けたい言葉の群像でもある。
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