印象に残った内村光良の言葉
――彰を演じていて苦しくなるようなことはなかったですか。
それはないです。僕は人殺しの役をやったこともありますけど、そんなに役に引っ張られることはないんです。役と自分をくっつけてしまうと、逆に芝居ができなくなってしまうとも思うので。
それよりも、自分の戦争に対する想いのようなものがこれで世の中に伝わるのかな?と考えると、苦しいと言ったら大げさですけど、近い感情はありました。僕が戦争に対して何も思っていないとは、思わないでほしいというか。僕の個人的なことで、誰のせいでもないんですけどね。
――その複雑な感情はどなたかに伝えましたか。
この作品に携わっている方々は知っています。そういう僕の想いを聞いてくださった方々には感謝しかないです。それを伝えた上で表現しないのと、伝えずに表現しないことでは違いますから。
――時を経て、再び特攻隊員の役を演じるというのも縁がありますね。
僕、昭和を知らない世代なのに、なぜか昭和が似合うってよく言われるんです(笑)。顔立ちなのか、誤解を恐れずに言うと、中身の濃さなのか。
昭和って敗戦国というコンプレックスを持ちながら、その中でも懸命に生きようとした、日本が良かった時代だと思うんです。確かに、今のように物が豊富ではなかったかもしれないけど、何でも一から始めるみたいな時代だったから、そこに懸ける情熱のようなものがあったのかと。
たまたまその時代感と、僕が持っている素質が合っていて、「昭和が似合う」と言われるのかなと。自分ではそのように分析しています(笑)。
――当時と自分が変わったと感じるところはありますか。
演技に関しては、自分が今、どのようになっているかを見ようとする、客観的な目が持てるようになりました。当時はセリフを噛まないようにとか、次、誰のセリフだろう?とか、覚えなくてはいけないことで精一杯というお芝居をしていたと思います。
それと比べると、今は、噛まないようにというのはありますけど(笑)、自分をこういうふうに見せたいと思えているところは、大きな成長だと感じます。プロとしては当たり前のことですけど、素人がここまでくることは結構、大変なことだったので。
――劇中で、百合は彰がくれた言葉を深く胸に刻みますが、水上さんが、最近、誰かにもらった言葉で印象に残っているものはありますか。
この前、NHKの『LIFE!』(内村光良らが出演するコント番組)に出演させてもらったとき、僕が苦し紛れに「コントって何でしょうか」と尋ねたら、内村さんが「人生に捧げるものじゃないでしょうか」とおっしゃっていたことです。
僕は自分の人生は、自分が主演の舞台に立っていると思っていて、それを喜劇にしていきたいなって思うんですけど、そう考えている僕にとって、内村さんの言葉はとても素敵に響きました。面白く生きていけるヒントになるなと思いました。