「公共の場での授乳」をはじめ、育児関連のトピックスが炎上したというニュースを度々耳にします。果たして日本は“子育てしづらい国”なのでしょうか。
「専門家と考える 公共の場での授乳問題」海外シリーズ第1弾、ミャンマー・ヤンゴン在住ママに聞きました!
ベビー休憩室も授乳ケープもない!でも誰も気にしない?
――イワサマキコさんは、パートナーのお仕事の関係でミャンマーへお引っ越しの後、現在は3歳の男の子をヤンゴンで育てていらっしゃるとか。
生後6カ月で現地へ渡られたとのことで、授乳の経験もおありかと思います。まずはミャンマーのおっぱい事情を教えてください。
イワサマキコさん(以下、イワサ):出かけた先で、ミルクの入ったほ乳瓶を持って飲んでいる乳児、またママのおっぱいから授乳されている乳児の両方を見かけます。
昔の日本のように「粉ミルクの方が栄養があって発育が良くなる」という考えがあるようで、リッチな人は粉ミルクが多い印象です。実際のところミルクの価格は物価に対して高いので、お金持ちしか買えないかもしれません。
その一方で、かなり大きくなるまでママのおっぱいを飲んでいた、という話も聞きます。
――「公共の場での授乳」を目にされる機会も少なくない、ということですね。ミャンマーの方たちにとって「公共の場での授乳」は、どのように捉えられているのでしょうか。
イワサ:授乳自体が、自然な行為として捉えられているように思います。
授乳ケープのような商品も見かけませんし、授乳室のような設備は、ホテルやショッピングモールなどの近代的な施設でも見かけません。
道端で授乳している人も珍しくありませんし、スーパーマーケットのレジ前に椅子を置いて、そこで授乳している人もいました。周囲もママが子どもにおっぱいをあげるのは当然といった雰囲気です。
乳首部分は多少隠している感じはしますが、中にはペロンと出して授乳している人もいて、その是非についても、特に論争にもなっていないようです。
ミャンマーでは子ども、特に赤ちゃんはみんながちやほやかわいがってくれるので「公共の場での授乳」に対して否定的な目線がないのは、そんなお国柄もあるのかなと思います。
――ではイワサさんご自身は、どんな風に授乳を?
イワサ:周囲が特に気にしないので、私も授乳ケープを使うまでもなく、大きめのTシャツの下にもぐらせて授乳したりしていました。
気温が40度を超えることもあるので、ケープは自分も暑いんですよ(笑)。
なんなら同席している人と反対方向を向いて授乳すればいいや、くらいの感覚になっていましたね。
――ミャンマーの男性たちは、どのように感じているのでしょうか。
イワサ:公共の場で授乳することが、ごくごく当たり前のことなので、特に何か意見を持っている人はいないように思います。
例えば「喫茶店で飲み物を飲むのはどうか?」とか「暑い時に日傘をさすのはどうか?」なんていうのが議論にならないのと一緒で、社会として当たり前なので、特にトピックにもあがらないという印象です。
男性だからといって、それは変わりません。
暑い日には女性もロンジー(民族衣装の巻きスカート)のまま水浴びしたりしているので、半裸にあまり抵抗がないということもあるのかもしれません。
――社会的に「公共の場での授乳」が、受け入れられているということでしょうか。
イワサ:受け入れられている、というよりもむしろ・・・
ヤンゴン暮らしで実感したミャンマーのいいところ、そして日本のいいところ
イワサ:ミャンマーは南国だからでしょうか、あまり、他人の行動に対して自分の意見、特にネガティブなことを言う場面に遭遇することがありません。直接的な害がない限り、そんなに人の行動に対して興味もないし、意見もないのです。
――興味もないし、意見もない、ですか。
イワサ:自分は自分、人は人というか、ネガティブな干渉はしないし、されないんです。
ただ、人の「行動」に対する“興味”や“意見”はないんですが、「親子」とりわけ「子ども」や「赤ちゃん」に対して、やたら“関心”はあるというんでしょうか(笑)。
老若男女問わず子どもや赤ちゃんが大好きなので、赤ちゃんがいるとそれだけでみんな笑顔になって、メロメロになってあやしに来ます。知らない人にすれ違いざまチュッとされたり、抱っこひもから出た子どもの手足をちょんちょんと触られたり、なんていうのは日常茶飯事でした。