「全日本おっぱいサミット」が2017年11月3日、東京ウィメンズプラザで開催されました。
「公共の場での授乳」問題炎上とは?男性のエロティシズムとは?ママと赤ちゃんの身体で何が起こっている?“おっぱい”スペシャリストが来場者たちと語り尽くした、当日の様子をレポートします!
昨年(2016年)末から、ネットをはじめ新聞やテレビのワイドショー、ニュース等も巻き込んで大論争となった「公共の場での授乳」問題。「ハピママ*」特集サイトでは賛否両者のご意見を紹介してきましたが、積極派にも消極派にも、そして否定派にも、それぞれ“理由”も“背景”もあるようで・・・
であればいっそのこと、誰もが深~く愛する“おっぱい”について、各々の“おっぱい観”をガチンコで語り合ってみようじゃないか!
相手が不寛容だ非常識だと決めてかかるのではなく互いの事情や気持ちをオープンにして、いろんな解決プランを探ってみようじゃないか!と企画されたのが、
「全日本おっぱいサミット――あなたの知らない“おっぱい”の世界――」。
トークショーの登壇者には、“おっぱい界”のスペシャリストが名を連ねました。
おっぱい論争炎上!ネット&リアル社会を徹底分析 ジャーナリスト・津田大介
おっぱい美の巨匠!500名以上のバストを撮り続けて四半世紀 写真家・伴田良輔
おっぱいの悩みを救え!ロングセラー『おっぱいとだっこ』監修 産婦人科医・村上麻里
いわゆる育児系のイベントとは一線を画す顔ぶれで、果たして、如何なる“おっぱい”の世界が語られるのでしょうか。
客席を見渡せば、赤ちゃんを連れたママやパパのみならず、ババジジ世代もチラホラ。さらになんと!20代と思しきピン男子の姿もあります。“おっぱい”の吸引力、恐るべし。
舞台に目を移せば、進行役の今一生さんはギャルソン姿。聞けば「公共の場での授乳」=“おっぱい in public”から、パブをイメージしたものだとか。
そして心地よいジャズの音色と共に「全日本おっぱいサミット」の幕が開きました!
――「チリリン♪」とカウベルが鳴って、津田大介さんがステージに登場。
今回「公共の場での授乳」論争のきっかけとなった朝日新聞投書がスクリーンに映し出され、投稿主の20代女子大学院生が「アルバイト先のショッピングモールのレストランで授乳する母親がいるが目のやり場に困るので授乳室に行ってほしい」と訴えた声が紹介されます。
そして、津田さんのトークが始まりました。
「公共の場での授乳」問題炎上!海外では論争をきっかけに法制化された例も
津田大介さん(以下、津田):実はこの問題については海外でも議論が進んでいて、例えば2010年には台湾で「公共の場での授乳」を妨害したりできない条例ができました。
博物館で授乳をしていたお母さんに係員が「トイレか、ほかの場所に行ってやってくれ」と言ったことがきっかけとなって、世論の後押しもあってかなり厳しい法律になっていったんですね。
このようにここ数年、海外でも議論がされたり、法律ができたりしています。
とはいえ目の前で授乳をされたら、率直なリアクションとして「どうすればいいんだろう???」と思っちゃうところはありますよね。
ガン見していてもちょっと変でしょうし、目を逸らしちゃうことしかできないところもある。
授乳ケープとかで隠してもらった方がいいとは思うんですけど、ただ人によってはそれでもダメだっていう人もいる。
同性であっても目のやり場に困る人もいるでしょうし、例えば不妊治療をしていて子どもが欲しいのにできないといった方は、そういったシーンを目にするだけで辛いと感じる人もいるでしょう。
結局、いろんなことがケースバイケースになり過ぎちゃっているともいえると思いますね。
ただその一方で、赤ちゃんがちゃんと授乳されること、それもひとつの人権、権利と考えることもできるので、「公共の場での授乳」をどう捉えるのかといった議論では、同時にそういった権利も守っていかなければならないと思いますね。
アンケートで示された“深刻な数字”と、ママ&赤ちゃんの苦しさ
今一生さん(以下、今):今回、ぴあ運営のサイト「ハピママ*」が実施したアンケートによると「公共の場であなたは授乳しますか」という問いに「授乳していた」と答えたのが回答全体の2/3くらい、「しない」という人が約35%いました。
「しない」ということは家の中で赤ちゃんとしばらく過ごす、過ごさざるを得ないということで、これはもしかしたら、赤ちゃんと二人きりでずーっと家の中に閉じ込められることになって・・・それこそ「産後うつ」といった問題にもつながりかねないんじゃないでしょうか。
津田:これ、結構深刻な数字ですよね。授乳の問題があるから、1/3の人が極力外出を控えている。
いまはいろんなものが発達はしていて、例えば安心して授乳できるような場所を見つけられるアプリみたいなものもあって、そういうツールを使ってみることもできます。
でも便利さの裏側で、赤ちゃんや小さいお子さんを抱えた親御さんが、他人に迷惑をかけないために、事前にたくさん調べなきゃならなくなっているところもありますよね。
さらに難しいのは、お出かけ前にインターネットやアプリで一生懸命調べたものの、実際に行ってみたら掲載されていた情報と違っていたというケースもあって、それで結果的にほかの人に迷惑をかけてしまったんじゃないかと不安になる。やっぱり、全部が全部正しい情報とは信じられない。
そういった一連の面倒くさい、精神的な負担を抱えるくらいだったら、外に出るのはやめようってなっちゃっているのもあるのかな、と。
アンケートの“少数派”は本当に少数? 社会を変えてゆくうえで必要なのは?
さらに「授乳していることが分からなければOK」となるとプラス10%くらい、およそ8割がOKになります。
この統計だと先ほどの新聞投書をした女子大学院生はマイノリティー、つまり“少数派”とはいえると思うんですけど、ただ目のやり場に困るという不快感は、実際におっぱいを出されたら、誰もが感じてしまうかもしれないし、困惑してしまうことかもしれません。
でも現実として、子どもはいつ泣き出すか、どのタイミングでおっぱいを欲しがるか分からない。となると、自分の服の内側に赤ちゃんの首を突っ込んで授乳せざるを得ないこともあったりするようで。
今:これは、赤ちゃんが大変そう。
例えば自分で、大人の男が、ギュウギュウに布をかぶせられて首も締まりそうな状況で何か飲むことを想像してみたら・・・こんなの、絶対に苦しいですよね。
津田:ほんとはね、今日の会場にも、もう少し男性の方々に来てもらいたいですよね。たぶん男性がこの問題に気付いていかないと、社会制度は変わらないというところもあると思うんですよ。
ほかに世代間の“ギャップ”というのもどうしてもありますし、経験とか環境の差というのもあると思うんですけど。
“ギャップ”ということでいえば、例えば男子トイレにおむつ台がついていることが少ないとか。ほかにも個室の外にベビーベッドが置かれていて、誰でも入れるところで女の子のおむつを換えていると視線が気になったりとか。
子育てを社会全体で進めてゆく、インフラにしてゆく、そういった議論がまだまだ足りないと感じますね。
僕の友人が最近、韓国に行ったんですけど、韓国で空港の鉄道に乗ると妊産婦の方が座れる優先席があるんだそうです。
「出産を推奨しているので、妊産婦の方はそちらへ」っていうことなんですね。例えば公共交通機関でそういうのがあるだけで、お母さんは安心して外出できると思うんですが、なかなか日本だと、そこまでは考えにくいですよね。
「#全日本おっぱいサミット」にツイートされたママの叫び!“ギャップ”は埋まるのか?
今:授乳をめぐる大変さというのは、男には分からないところもいっぱいあるみたいで。
今回「#全日本おっぱいサミット」にも様々なツイートが寄せられているんですが。
「ホテルに行ったらロビーでの授乳は許可できないから授乳するなら部屋を1泊分取ってくれと言われた」とか、「電車で子どもに泣かれて降りた駅で駅員さんに『授乳室はありませんか』と聞いたらトイレに案内された」とか・・・現実として、こんな体験があるんですね。
ほかにも男には分からないなぁと思ったのは「授乳は激痛と修行、吸われて血豆ができては潰れ、シャワーすら痛くて辛い、産後は乳房が硬くなって痛い」とか・・・
こんなツイートから見ても、僕ら男が、我慢させちゃってるなぁ、男にはどうしたって切実には分からない、あぁなんと申し訳ないですという気持ちにもさせられるんですけれども。
津田:まさにその“ギャップ”をどういう風に埋めてゆくか、がポイントですよね。
そういう意味で、メディアの役割は結構大事になってくるんじゃないでしょうか。
あと、インフラという意味で言うと、よく利用されているのがイオンなんですよね。イオンモールって、おむつ交換台と、椅子付きの机とかも複数設置されていて、おむつを捨てられたりとか、そのための袋が常備してあったりとか、おむつがなくなってもすぐ1枚ずつ買えたりとか。
だから休日にも人がたくさんいて、子連れの方も多いのは、実は授乳をするためのインフラが整っているというのがすごく大きい
例えば、授乳室は併設してあっても授乳スペースとおむつ替えスペースの境が曖昧だったりして、そうすると食事をする場所と排泄とが近くなってしまう。
たぶん最近は作る側も配慮しているところもあるんですけど、昔ながらのところもまだあって、さっきのツイートにもありましたけど、そういう意識が「トイレでどうぞ」と言われてしまうことにもつながっている。
「公共の場での授乳」問題の背景には、このあたりの意識、“ギャップ”の難しさっていうのもあるんだと思いますね。
――男女間の“ギャップ”などなど思い悩んでいたところ、再び「チリリン♪」とカウベルが鳴って次なるゲスト、写真家の伴田良輔さんが来店されました。