「産後うつ」!医学データから「いま何が問題で何ができるのか」を考える

村上麻里先生(以下、村上):こんにちは。産婦人科医の村上麻里と申します。

自己紹介の写真にもありますとおり私も3人の子どもがいまして、もう全員大学生になってしまったので寂しい限りです。今日はたくさんの赤ちゃんが来てくれていますけれども、ほんとにいいですね、癒されます。

村上:さて今回のテーマ「密室育児」と「産後うつ」についてなんですが、実は「密室育児をすると鬱になっちゃうよ」という医学データはございません。

そこで今日は、ママやパパ、赤ちゃんが置かれている現状と「いま自分たちでできることがないか」という視点からお話を始めたいと思います。

妊産婦死因のトップは自殺!出産期自殺率は東京が突出

村上:産後1年までの妊産婦死因というデータがあるんですけれども、臨床をやっている立場からは産後の死因というと、出血に伴うものとか羊水塞栓(そくせん)とか、そういう産後の突発的なものかなと何となく思っていたんですが、データを見てビックリです。

主だった死因があげられた276例中、自殺が102名、37%。これもちょっとビックリだったんですけれども、その次ががんで75名、27%。出血も23名でたしかに多いんですけれども、それよりもずっと自死の割合が高い。

どんな時期に亡くなられたのかというのも、データで探しました。自殺した時期が分かっているものです。

特に産後何カ月がすごく多いというわけではなく、何カ月というよりも、35歳以上初産婦さん、世帯職業は無職、という方は、自殺率が高い。居住地や自殺手段では違いがない、という結果だそうです。

東京23区の妊産婦の異常死データ、2005年から2014年までの10年間で、ちょっと前ですけれども、自殺63例についてまとめられたものもあります。

やっぱり年齢が高い方に、自殺率がシフトしています。意外と63例中23名が妊娠中だったりもするので、妊娠中からもなんらかの注意が必要なのかな、というところです。

うつの可能性のある妊産婦の割合について調べたアンケート調査の結果もあります。初産婦さんの方が、全体的にちょっと高い。それから産後2週目が「この人うつなんじゃないの?」という割合が、非常に高くなっています。

病院から、または産院から1週間弱で退院して、家に帰りますよね、で、慣れない育児を始めて、疲れがピークに達してくるのが2週目なんじゃないかな、と。最近では2週間の時期に合わせて、1カ月検診の前に2週間検診というのをやっている施設も増えています。

ちょうどこの、疲れがたまって心配事が起きて「わぁどうしよう!」という時に一度、病院・産院に来てもらって「困っていることは?」とか「こういうのが心配かしら?」とか、そういう話し合いができると、この2週目の抑うつを拾い上げることができるんじゃないのかな、というところですね。

で、もうひとつ。

東京とスウェーデンとイギリスの、出産期自殺率を比べたデータもありますが、出生10万あたりイギリス2.3、スウェーデン3.7、東京が8.7、で東京だけ突出して高い。

妊産婦死亡率としたらそんなに大きな違いはないんです。出産に伴う突発的な病気になったりして亡くなってしまう割合はあまり変わらないのに、自殺率だけなんでこんなに高いの?っていう話ですよね。

男性も10人にひとりが「産後うつ」に!発生ピークは女性より遅めで産後3~6カ月頃

村上:産前産後の男女の「うつ」の状態、についてもデータを見てみましょう。

妊娠中から、男性で「うつ状態」が発生しています。産後の女性もたしかに全体的に高いんですが、男性ですと産後3カ月から6カ月くらい、少し遅れてピークが出てきます。

男性の方が、たぶん妊娠中の実感がないので、生まれてから「こんなに大変なのか!」というのが分かってきて、じわじわ蓄積して出てくるのかな、なんて勝手に思っていますけれども、男性の方が「うつ」が発生する時期が遅いですね。

割合にして大体13%、10人にひとりは男性でも「産後うつ」になる。10人にひとりって結構な割合ですよね、男性にもサポートが必要なんじゃないでしょうか。

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