女性の「うつ」高リスク年代は産後と更年期!リスクを減らすために見直されるべきこと

村上:女性の方が「うつ」になりやすいというのは医学的にも知られていることで、女性ホルモンが影響しています。

産後、女性ホルモン「エストロゲン」が急激に下がる時期、それから更年期の時期は、女性の「うつ」のリスクが非常に高くなる年代です。

あとは社会環境ですね。たしかに密室であるとか孤独であるとか、つながりがない、子どもが育って「空の巣症候群」といった状態になったり。あと介護が始まって、閉ざされた状態になってしまうというのもあるんですけれども。

「じゃあなんで男性もなるの?」というと「栄養」です。

ポイントは「鉄」です。「鉄」が足りないと、恐ろしいことにいろいろ身体に不調を来します。

現代女性は「鉄」不足!男女とも野菜ばかりでなくタンパク質・油を摂って!

村上:いま出産の回数が減っています、それから初経も早まって、出産までの年齢も長くなっています。

昭和22年(1947年)と平成26年(2014年)で比べたデータがありますが、昔は15~16歳で生理が来て、18から生み始めて40過ぎまで、産み終わって、閉経して、すぐ死んじゃうよっていうと、生涯50回くらいしか生理がないわけですね。

私の父方の祖母は11人ぐらい産んでます、育ったのが7人ぐらいで。すみません、“ぐらい”でしか言えなくて(笑)。私も父の兄弟を全部把握してないぐらいの人数です。母方は5人です。人数多いですよね。

これが現在だと12~13歳から生理が始まって、ずーっとずーっとずーっと生理があって、初めて産み始めたのが30歳ぐらい。それで1人か2人産んで、50歳ぐらいまで生理がまだ続くよっていうと、生涯450回も生理がある。

現代女性の生涯生理回数は、昔と比べて9倍なんですね。

1回の生理で鉄が3mg出ていっちゃうのですが「ちょびっとかな?」と思ってもこれが積もり積もって450回ですから。あと妊娠出産で1回500mg失われます。

そうすると、失われる鉄の量というのが昔は4g程度だったものが、現在は14gにもなるんですね。

何が困るかというと「ドーパミン」とか「セロトニン」とか「メラトニン」とか、こういった心と身体の健康にとって大切な脳内伝達物質を作るのに「鉄」が絶対必要です。

「うつ」に関係することがようやく出てきましたが、そういった物質は自動的に作られるわけじゃなくて、原料がいります。たんぱく質です。

みんな野菜を食べ過ぎです(笑)。野菜にそんなに期待してはいけません。

たんぱく質と油を摂らないと、肝心なホルモンや脳内伝達物質が作られません。ただでさえ女の人は貧血に慣れちゃうんですけれども、数値として貧血が出ていなくても、身体はすでに鉄不足・たんぱく不足の人が非常に多いのです。

幸せホルモン「オキシトシン」活性化には“ふれあい”と“いたわり”

村上:ここで「密室育児」の話をすると「オキシトシン」というホルモン、皆さんあちこちで聞いているかと思います。母乳を出すのに働いているホルモンなんですが、ちっちゃなアミノ酸がくっついたペプチドホルモンです。

これが脳の中では「セロトニン」とか「ドーパミン」とか「ノルアドレナリン」とか、そういう神経伝達物質で影響し合って身体の調節をしている、ということが分かってきました。

「オキシトシン」はいろいろな活動が動き出すところに関与しています。

普通でしたらホルモンが出過ぎるとフィードバックがかかって下がってくるというのが多いんですけれども、「オキシトシン」は働き出すと「オキシトシン」を受け止める受容体も活性化して、さらにまた「オキシトシン」が増えるというポジティブなフィードバックがかかることが知られています。

あとは“ふれあい”ですね、触れ合うと「オキシトシン」が出ます。赤ちゃんは生まれてすぐ、お母さんに抱っこさせると、それだけでお母さんの「オキシトシン」がぐーんと上がってきます。

ところが赤ちゃんを「じゃあ新生児室にお預かりしますねーっ」とか言って分離しちゃうとですね、1時間でもふーっと「オキシトシン」が下がっちゃうんですね。

生まれてすぐの、そういうシステムがちゃんと働き始めているのに、それを邪魔してはいけないわけです。

また子育て中も、もちろん赤ちゃんと触れ合うことで「オキシトシン」が出ているかもしれませんけれども、誰かにいたわってもらうと、より「オキシトシン」は活性化します。

なので「密室育児はよろしくない」という結論です。以上です。

今一生さん(以下、今):ありがとうございました。「産後うつ」を男女両方とも経験しているよ、というデータって意外とメディアでは出ていないですよね。

女の人ばっかりに危機意識を与えて、パパの方にはあんまり与えられてないと、結構キツイなって逆に思いますね。

実際には赤ちゃんをパパが育てているという事例ももちろんあって、パパとしてワンオペ育児を経験した方も今日はゲストで招いております。作家の樋口毅宏さん、どうぞ!