「密室育児」パパが語る!男だって女だってワンオペはしんどい!

樋口毅宏さん(以下、樋口):樋口毅宏と申します。10年前に作家になって、デビューした当初はハードボイルドな作家でやっていたんですけれども、5年ぐらい前に妻と知り合ってからは、育児的な、全然それまでとは違うスタイルの作家の方に変わりつつあります。

樋口:妻と知り合ったのは僕が当時Twitterをやっていてエゴサーチをしたら、三輪記子(みわふさこ)という京都で弁護士をやっていて、たまにテレビにも出たりするような人を初めてそこで知って、DMを送って、というのがきっかけです。

最初は「セフレ以上恋人未満」みたいな関係が半年くらい続いていたんですが、ある時、妻の方から「樋口さんの子どもが欲しいです、籍も入れなくていいです、子どもの面倒も見なくていいです、養育費も一切要りません」って言われて。

その言葉を全部鵜呑みにしたワケじゃないんですが、でも気が付いたら、生まれ育った東京を離れて、京都に移り住み、籍も入れて、赤ん坊の面倒もひとりで、昼間から24時間見るような生活に変わっていた、という感じです。

妻が外に出て仕事をする人で、僕はもとから家で仕事をしている人間なので自然とそうなったのですが、いまも僕が子どもと一緒にいる時間は長くて、おむつを替えている回数も僕の方が桁2つ以上多いと思います。

夫婦それぞれ感じた「産後うつ」の辛さ。子どもが1歳になるまでの記憶はない

樋口:さっき「産後うつ」のデータが出てましたけども、ほんとに「思い当たるな」と。

妻も39歳で初出産だったんですけれども、もともと感情の起伏が激しい人だとも思うんですが(笑)、特に生まれてから半年ぐらいまでは、本ッ当に、エキセントリックに輪がかかっていたと思います。

例えば妻が赤ん坊と寝ているので「大事なことを言い忘れないように」と思って、メールで送っておくんですね。もちろん電話の音は切ってあります。

そうすると夜中、途中で目が覚めた妻がメールを見て「なんで夜中にメール送ってるんだ!!!」とか、もうとんでもないキレ方をされることが多かったです。それで、僕の方もすごい辛かった。

いま考えてみると妻が仕事に復帰したのは出産の2カ月後なんですが、弁護士なので生まれて割とすぐに職場の方に顔を出して、いろいろ書面も書かなきゃいけなかった。

その内、テレビ仕事にも復帰して、東京でテレビの生放送があるため、僕が生まれて4カ月の息子と、ふたりで夜を明かさなきゃならないこともあったりして。

保育園に入れたのは生まれてから5カ月後だったので、その1カ月間はもう割と、僕が付きっ切り、でしたね。いま考えても、よく頑張ったなと思います。

今:「抑うつ状態」って自覚できるものですか。「産後うつ」みたいな時期って、分かるものなんでしょうか。

樋口:自覚もあったと思います。妻が毎週木曜日にテレビで朝の生放送があったものですから、そうすると水曜の夜は、僕と子どもが、ふたりきりなんですね。

生まれて3~4カ月とかだと2~3時間ごとにミルクで、もしくはおむつ替えてくれって子どもは泣きますから、それで起こされて。

もうとにかくそれまでは好き勝手に生きていたので一日24時間、自分の好きなように、好きなことを好きなだけ、仕事もできる環境だったんですけれども、子ども中心の生活になりますから、とにかく「大変だったな」という思いがあります。

生まれてから最初の1カ月間はやはり、記憶にないです。皆さん、お子さんをお育てになった方たちは同じだと思うんですけれども。

余裕というか、なんとか目途が立つようになったのは赤ん坊が1歳何カ月になったくらいからですよね、やっと。

うちの子も間もなく4歳なんですけれども、よその子の赤ん坊も素直に心から、無邪気に「かわいいなぁ」とか思えるようになったのも、ここ最近なような。

とにかく「大変!」っていうこととか「育てなきゃいけない!」っていう義務感・責任感の方が、大き過ぎて、大き過ぎて。

「密室育児」は世界が狭くなりがち Twitterやママ友会に助けられた

樋口:当時は、ストレス解消も何もなかったですし。見ず知らずの京都で、友だちも周りにいないし。

いまでこそ東京に戻ってきて2年になるんですけど、ほんとありがたいことに、同じ保育園のママさんとお友だちになって、昨日もそのママさんと、ママさんのお友だちのおうちに行って、ほかの同じ保育園の子たちと子どもたちを遊ばせといて、大人たちは適当にこっちで酒飲んだり、まぁ食べたりする、っていう空間があるんですけど、すっごいありがたいんですよね。

でも京都ではそういう場もなかったので、ただただ鬱々として、Twitterでたまに愚痴を書いたり。

だけどTwitterで、生まれて何カ月かの赤ん坊が下痢が続いたりしていた状況の時に「こういう時どうしたらいいんですかね」みたいに聞いてみたら、何人もの見ず知らずの人たちが「おむつのテープをばってんに止めるといいですよ」とか教えてくれて助かりましたね。

当時はほんとに、世界が狭かったと思います。さっきはデータを見たりして、あの頃の思いがフラッシュバックしたりして・・・ほんと辛かったというのが正直なところです。

今:では樋口さんのお話を受けて、もうひとりのゲストをお呼びしましょう。ワンオペ育児のケースとは逆に、身の回りに親ばかり?「親がいっぱいいました」っていうところで育てられた、加納土さんです。どうぞ!