「奪われる側」の気持ち

「別れたいけど彼女がしがみついてくるなんて嘘で、出来心で私の相手をしていたのかなとか、ショックでいろいろ考えました」

突然の「復活宣言」に、由紀江さんは相当に慌てたといいます。

それは、「もし彼女との仲直りを考えているのであれば、それを教えてほしかった」という、ささやかな恨みでもありました。

「私ばかり舞い上がってたみたいで、恥ずかしかったです……」

でも、男性のメッセージや態度を見ればいわゆる「思わせぶり」なところは一つもなく、距離を縮めようとする由紀江さんを拒否はしないけれど完全に受け入れることもしない点は、一線を崩したくない男性の意思がわかります。

「遠ざけないから好かれる可能性はあるはず」と思いこんでいたのは由紀江さんの事情であって、それと男性の現実はまた別なのですね。

自分と話しながら彼女とどんな接触をしていたのか、それは今もわかりませんが、男性が選んだのは「彼女との交際を続ける」ことでした。

略奪愛で考えれば男性は「奪われる側」であり、「彼女を乗り換える」ともいえる流れをどう思っていたのでしょうか。

もし由紀江さんのことを本当に好きになっていれば、彼女としっかりと別れてから「付き合ってほしい」と堂々と口にしたことが想像できます。

そうではなく、今の彼女と向き合う選択をしたのは、由紀江さんからのアプローチがあったからこそ、今の自分の状態をきちんとしようと思った可能性もあると思いました。