電車内でやむなく授乳、
ママの実体験から生まれたひらめき
『私には3人の子どもがいるのですが、真ん中の子が生後1カ月を過ぎた頃だから18年ほど前のことになるでしょうか。
健診で外出OKも出て「サァ出かけるか!」ということになって、自宅のあるつくばからバスと電車を乗り継いで、立川(東京)の友人のところまで遊びにいったんです。
そうしたら、東京駅で中央線に乗ったところで、子どもが泣き出しまして。
泣きわめく赤ちゃん、目立ちまくりですよ。
周りは「何とかしろよ……」という感じですし。
そりゃもう、立ってみたり座ってみたり、あやしたり、お尻を覗いてみたり。
でもお腹が空いているから、どうしようもなくって。
あれは吉祥寺のあたりだったかな、ブラウスのボタンを開いて、その場で授乳しました。』
――電車を降りる、という選択肢はなかったのですか?
『なんで降りなかったのか、ですか。
正直、そこまで頭が回らなかった。
いま思えば「降りればよかった」んでしょうが、パニックになっていたんでしょうね。頭の中は真っ白ですよ。
1人目はミルクだったので「この子は母乳が出るようになったから、大荷物を持たずに身ひとつで出かけられる♪」って、実はルンルンで出てきたんですよ。
でも、赤ちゃんが泣くことは分かっていたんですけど、いざその時にどうするかは、何の備えもしていなかった。
母乳指導をしてくれていた助産師さんからは「母乳は楽よ」と言われていたのに「話が違うじゃないか!」と。
「なんで人前で胸を曝さなくてはいけない?」、「これじゃミルクの荷物を持って出たほうがいいじゃないか!」と……そんな風に思いました。』
――それが“子育てスタイル”のご活動のきっかけに?
『いえ、本当のスタートは、その後じゃないかなと思っていて。「どうして当たり前におっぱいをあげられないのか?」、「自分にできることって何?」といろいろ考えたり調べたりしているうちに、「授乳服」というものがあることを知りました。
それで海外から取り寄せて、着てみたんです。
そうしたら……』
ママの“制限”をとっぱらえ!
――そうしたら?
『サーッと雲が晴れて、パーっと空が見えてくるような、外の世界へのパスポートをもらったような、そんなものすごい解放感があったんですよ。
生後1カ月の赤ちゃんを連れて上京するような私ですから、もともと「子どもがいるから我慢」という考えはなかった“つもり”だったんですね。
それが自分にも、こんなに制限があったのかと気付かされた。
「子どもがいるから出かけられない」という状況を、服1枚で解決できるなら解決しよう!と授乳服を作り始めて、のちに授乳服メーカー「モーハウス」を起業していまに至ります。
赤ちゃんを連れて、こんなに楽に外出できる!
初めて授乳服を着た時の、自分の意識が180度変わったあの体験が“子連れスタイル”活動のスタートになりました。』
「授乳服」と「授乳ケープ」メリット&デメリットは?
――その「授乳服」ですが、それでも「見えちゃうんじゃないか」という点がやはり気がかりです……