「友だちにも『結婚して子供がいる感じがまったくしない』ってよく言われます」
とはいえ、山田がこういう普通の人の役を映画で演じるのは、『50回目のファーストキス』(18)を除けば、『手紙』(06)以来のこと。
山田孝之=パパって聞いても信じられない、イメージができない人も多いはずだ。
そのことについて山田は「21歳ぐらいのときに出演した『手紙』にも後半、娘に本を読んであげるシーンがあったけれど、それ以降、僕がそういう作品を選んでこなかったから、イメージがないんでしょうね」と告白する。
さらに、「友だちにも『結婚して子供がいる感じがまったくしない』ってよく言われます」と続けた。
「仕事の仕方を見たら分かるだろうけど、僕自身そういう空気を出したくないと思っているし、柔軟剤のCMとかパパを感じさせる仕事がいっぱい来て落ち着いたイメージが着くと、奇抜なことがやりづらくなりますからね。
まだまだヤンチャしていたいんですよ(笑)」
なぜ今回は、これまで避けていた普通のパパを演じてみようと思ったのか?
それでは、なぜ今回は、これまで避けていた普通のパパを演じてみようと思ったのだろう?
そんな素朴な質問をぶつけると、「普段は見せないようにはしてますけど、僕にもこういう顔があるんですよ(笑)」とはにかみながら、いまの素直な気持ちを明かしてくれた。
「飯塚監督から数年前に台本を渡されて読んだときに、普通に“面白い”と思ったんです。
シンプルな親と子の話じゃないですか。言ってしまえば、それだけ。
あとは、そこに妻がいないというのも大きなポイントで、そういう役はやったことがないな~と思ったんです。
役者がその芝居をしてみたいというのは、その人の人生を歩んでみたいってことなんですよ。
僕には娘がいないから、娘を育てたらどうなるんだろう? 妻がいなくなったらどうなるんだろう? ということを経験しながら、健一の人生を歩んでみたいと思ったのが、出演を決めたいちばん大きな理由ですね」
子育ての芝居にどんな手応えを感じたのか?
健一の娘・美紀はその成長に合わせて、中野翠咲(2015年生まれ)、白鳥玉季(2010年生まれ)、田中里念(2007年生まれ)の3人の名子役たちが演じわけているが、経験したことのない幼い少女たちとの共演、彼女たちをめぐる子育ての芝居にどんな手応えを感じているのだろう?
「(5月12日の段階では)撮影がまだ3分の1ぐらいしか終わっていないので、里念ちゃんとはまだ全然喋れてないですね。
緊張していたからだと思うんですけど、けっこうシャイな子みたいで。これから撮影が増えれば、もう少し喋れるんじゃないかなと思います。
玉季ちゃんは逆にフレンドリーな子だからガンガン喋りかけてくるけれど、翠咲ちゃんはまだ3歳半なので、機嫌がいいときはいっぱい喋ってくれるものの、機嫌が悪いときは、僕の顔を見たら仕事だって分かるからすごく拒絶反応を起こして。
一度、本当に嫌われたのかと思って、すごく傷つきました(笑)」
「自分にこの年齢の娘がいたら、どんな話をしてみたいかな? と考えた」
聞けば、いちばん年長の里念ちゃんとのシーンは、美紀が少し反抗期に入った時期のシーンのため、山田は敢えて彼女と距離をとり、仲よしなころの玉季ちゃんには普段から話しかけて距離を縮めていったという。
「撮影の合間に電車が走ってきたら、『電車がどうやって走っているか知ってる?』って聞いて、『ガソリン』って答えたら『電気なんだよ』って教えてあげて。
彼女が『友だちの話なんだけど……』って断りながらも、確実に自分のことなんだって分かる好きな男の子の話をしてくれることもありました(笑)。
『そうなんだ、そうなんだ』って聞いていたら、『私のことをそうやって嫌いっていうのは……』って思わずボロを出すから、あっ、本当のことを言ったと思って(笑)。
そんな感じで、単純にいま、自分にこの年齢の娘がいたら、どんな話をしてみたいかな? と考えて、素直に思ったことで会話をしていましたね」
山田はさらに続けた。