お芝居の究極はリアルに近づくこと

© 2020「嘘八百 京町ロワイヤル」製作委員会

――今回、演じていて印象に残ったシーンは?

やっぱりさっき話した蔵之介さんと二人のシーンですね。あの場にいて、自然と悲しくなれたんですよ。「お前の手はまだキレイだ」ってことを言われて、「もう汚れています」っていうセリフが何をしようとかって考えずに出ていて。あの一言はちょっと「よし!」って思えたかもしれないですね。

――佐々木蔵之介さんを始め、中井貴一さんなど、今回はベテランの俳優の方々と共演されましたが、そこから何か感じたことはありましたか?

いい意味で普通にいる力を感じました。今、ここ(取材現場)にいる方たちは普通にいるじゃないですか。誰もセリフを言おうなんて思ってない。これです。台本があるのにそれができる。何かをやってやろうじゃなくて、役の人物として自然とそこに存在する力を感じて、すごいなって思いました。

逆に言うと、お芝居をしていないんです。反応も本物に見えるというか。まだ俳優を始めて10年目の僕の考えですけど、お芝居の究極はリアルに近づくことだと思うんです。お芝居にしないことが一番重要というか。本当にそう思って、その瞬間を生きたら、そういう風になっちゃった。セリフと同じ文字を言って、演出通りの動きになっちゃったみたいな。変な邪念を捨てた瞬間に本物になれるような気がして。

――皆さんそれができていらっしゃる?

それを感じました。もちろん狙って面白くしようとしている場面もあるのかもしれないんですけど、 それが一切見えなかったですね。

「山田裕貴が出てるんだったら観てみよう」って思ってもらえる人にならないとダメ

© 2020「嘘八百 京町ロワイヤル」製作委員会

――では、山田さんからの目線から見たこの物語の見どころを教えてください。

人間の面白さが詰まっているというか。嵐山(加藤雅也)さんの欲深さだったり。則夫(中井貴一)さんと佐輔さんがなぜタッグを組んでいるかというのは、パート1(映画『噓八百』18年公開)で明かされてはいるんですけど、お互いに思うところがあって、相手に乗っかってみたり。志野(広末涼子)さんに騙されながらも、本当の心はつかんだり。すべての交わり方が絶妙ですよね。

あとは、やっぱり一つひとつの反応が、皆さん本当に面白い。挙動一つが面白いなって思いながら観てました。

撮影:小嶋文子

――最後に、山田さんの2019年はドラマ、映画、舞台などいずれも大活躍の一年だったと思いますが、それを踏まえて今年の抱負を教えてもらえますか?

とにかくいろんな方に愛されたなっていう感覚はありました。現場でも、キャストの皆さんにも、(作品を)観てくださった方々にも。そうやって(愛を)もらうと、こっちも演技で返そうとか、みんなに喜んでもらうために何か動こうとか、そういうことを考えるようになって、そうするとどんどん楽しくなっていくんですよね。

だから、今年に限らず、いつも変わらずに思っていることなんですけど、ちゃんと作品を観てもらえるようにならないと、って思います。観てもらえないと、みんなが作品にかけた愛情も伝わらないから。

「山田裕貴が出てるんだったらちょっと観てみようかな」って思ってもらえる人にならないとダメだなって思いますね。ちゃんと作品を観てもらえて、そこに何か爪痕を残せていないと戦っていけないと思うし。そのために精神を削りながら、何かまた戦っていければいいなって思います。


2019年はNHK連続テレビ小説『なつぞら』での好演や、主演を務めた舞台『終わりのない』で文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞を受賞するなど大活躍だった山田裕貴さん。しかしそういったことに少しもおごることなく、真摯に俳優として芝居に向き合っている想いを語ってくれた姿はとても素敵でした。

今年もさらなる活躍が期待される山田さんのお芝居を映画『嘘八百 京町ロワイヤル』でチェックしてみてください。

作品紹介

『嘘八百 京町ロワイヤル』
1月31日(金)全国ロードショー
© 2020「嘘八百 京町ロワイヤル」製作委員会