6.電車・街での子連れマナー・常識

くれ「上海と日本で、出産後の育児を経験して感じたことは、なんといっても『上海の人は赤ちゃんや子どもにとても優しいな!』ということです。

日本では、公共の場所に小さな子どもを連れて行ったり、電車やバスに乗ったりするときは、とても気を使いますよね。

でも、上海では『子どもが泣いたり騒いだりするのは当たり前』という考えを多くの人が持っているからでしょうか。子どもが泣いたりうるさくしたりしても、周囲の人が笑顔であやしてくれたり、席を譲ってくれたり、とても暖かくしてくれます。

日本では悲しいことに、嫌な顔をされる方も時々見かけますが、上海ではほとんどそのような場面を見たことがありません。

なので、子連れでお出かけするのにプレッシャーがないという意味では、とても子育てしやすい街です。

上海では、パパママ以外の人が赤ちゃんを見ることが当たり前になっており、社会全体が子どもに対して寛容であるようですね。

日本とギャップがあると思ったこと

続いて、その他に上海での子育てをしているくれさんが、日本とギャップがあると感じたことを伺いました。

くれ「上海は、いまや大都会で便利になっているところも多い一方、道路や公共の場所に安全性が確保されていない場所も多く、日本にいるとき以上に子どもの見守りに気を回していないといけないことが多いです。

そういった事情も含めて、小学生以上でも一人で外出させづらく、学校や習い事の送迎は常に親がついていないと行けません。

うちは子どもが3人いるので、どこへ行くにも必然的に兄弟全員連れていかなければならないことも多く、体力的・精神的に負担が大きいです。

子どもが大きくなれば、上の子から順番に少し手を離れて楽になっていくな~と、日本では想像していたので、まだ手が離せないこの状況は正直大変だなと、ギャップを感じています」

安全性の面では、日本のほうが安心のようですね。

くれ「ただ、先の通り、上海では周囲の方が皆、子どもに温かく優しいので、子どもを連れ歩いて不安になることはあまりありません。

『あなた子ども3人もいるの? 大変だね!』『ママ、がんばってるね!』とすれ違う人が気さくに声をかけてねぎらってくれることも多く、子育てで大変なことがあっても、嬉しく元気になれる機会が多いです。

この点は、日本ではあまり経験しなかったことなので、良い意味でのギャップですね!」

これは日本では確かになかなかないこと! 上海で子育てしていることの大きなメリットといえそうですね。

ところ変われば、子育て事情も変わるもの。異国の地での子育て事情を知ると、日本での子育て環境が、いかに良いものであるか、また反対に、どんな課題があるかも明確に見えてくるものです。心機一転、日本での子育てに力を注ぎたいですね。

【取材協力】くれ ゆかさん

1978年生まれ。宝塚歌劇団宙組男役(芸名:潮和歌)として7年間舞台活動の後、大学で心理学・社会福祉を学ぶ。卒業後は(公財)日本生産性本部にて、企業研修企画や講師に従事。
二度の育休を経て、女性の自律的なキャリア形成の重要性を感じ、キャリアコンサルト国家資格を取得。2017年に退職、独立。Encourage Houseを設立し、女性や子育て中ママのキャリアデザインを支援。現在は、夫の転勤で上海在住。日中ハーフ三児の母。