母乳が赤ちゃんにとって完全無欠な栄養素であることは、誰も否定はできません。でも、出産したら誰もが母乳育児ができるのかというと、そうではありませんね。

理由はもちろんいろいろあるでしょう。飲ませたくてもまったく母乳が出ないという母親もいますし、母親の体調や状況からそれができないというケースもあります。

また、女性が仕事を持つことも当たり前になっている現代、職場復帰したものの、なかなか職場では母乳を与えられないということも多いはず。

実は母乳育児への課題は、日本だけではなく英国でも同じようです。英国リバプール大学の研究によると、『生後6か月までは母乳のみで』と勧める英国でも、実際には達成率は1%以下だというのです。

そこで、研究者達は、現在の母乳育児を促進する戦略や、「母乳は最善」というキャッチフレーズは多くの場合において有害無益だとし、より現実的な目標を掲げるべきだと言っています。一体どんな研究結果が出たのでしょうか?

今回は『グローバル社会に生きる子どものための6歳までに身に付けさせたいしつけと習慣』の著者で、日本・欧米いいとこ取り育児を提唱する平川裕貴が、研究結果をもとに母乳育児についてお話ししたいと思います。

リバプール大学の研究結果とは?

リバプール大学では、2歳2か月以下の乳幼児と1600人以上の母親を対象に、赤ちゃんに対する授乳方法によって、母親の感情や経験に違いがあるかについて調べました。

その結果、授乳方法によって、悩みの質や度合いが異なっていることが判明したのです。

授乳方法は、[A]完全母乳、[B]粉ミルクのみ(完全ミルク)、[C]母乳とミルクの混合の場合で分けられています。

[A]完全母乳の母親のストレス

完全母乳育児ができている母親は、育児に関する罪悪感や負の感情を持つことは比較的少なかったけれど、実は全く違うストレスを感じているようです。

それは、家族や公共の場で母乳をあげることや、職場復帰する際の不安など。

まだまだ母親が公共での場や職場で母乳を与えることに対して、抵抗を示す人達も多いですし寛容とは言えませんね。母乳育児の母親は、周りに対する気兼ねや恥ずかしさを感じることも多いのです。

また、完全母乳の母親は、赤ちゃん以外の家族にしわ寄せがいっているのではと感じることもあるようです。特にまだ小さい兄・姉がいる場合は、上の子に影響を与えるのではと不安を感じるかもしれませんね。

思うように家事ができないことに対するストレスもあるようです。

[B]完全ミルクの母親は劣等感や罪悪感が高い

完全ミルクの母親の6768%が、赤ちゃんにとって最善のものを与えられないという罪悪感や劣等感を持ち、76%が、なぜ母乳育児を行わないのかを他人に弁解しなければならないと感じていることがわかりました。

なかでも、完全母乳を始めたものの途中でやめてしまったり、妊娠中に完全母乳をしたいと考えていたけれど実際にはできなかった母親は、罪悪感を持つリスクが非常に高かったのです。

自分が、社会が考えるような『良い母』になれないと感じてしまうのでしょう。