あると思います。

「この作品は、おばあちゃまに観せたかったよね」

って、母も、兄もすごく言っていて。だから、いつも「南無南無(手を合わせる、佐江ちゃん)」してから、「今日も、観ててね」って言って、ステージに上がってます。

両親は、私が出ている作品で、肩の力を抜いて観られるのは初めてみたいです。

私が歌ったり、踊ったり、芝居すると、やっぱり父も母も親だから“佐江、大丈夫かな”って、緊張しちゃうみたいなんです。

「疲れるんだよね、佐江の舞台を観に行くと」

って、いっつもママが言うんです。でも今回は、

「もう、全っ然、平気! 楽しい!! 」

とか言って(笑)

「本当はもっと観たいけど、クッ…、お金がなぁーーい! 」

って言いながら、予定より2回くらい多く観に来てます。最初は、「初日と千穐楽だけ観に行く」って言ってたんだけど。あははははははは! だから、

「観たいときに観て。もう二度とやれない舞台なんだから!」

って、言ってるんです。

--それが舞台のはかないところですね。

そうなんですよ。でも本当に、いい作品に出会えたし、いいキャストの人たち、いい演出家さん、スタッフの皆さんと出会えたので。“自分は人に恵まれてるなぁ。幸せだなぁ”って、思います。

--海外の方たちと舞台のお仕事をするのも初めてですよね。

初めてです。自分は、感覚に従って生きて来てはいるけれど、性格は「ザ・日本人」って言っていいほど、窮屈なくらい真面目で、ラフなことができない人間で。だから余計に、海外の人の大らかな感覚にすごく憧れているんです。

演出家のフリオのフランクな雰囲気や、いいところをいっぱい褒めてくれるところとか(第11回)。人とのコミュニケーションの取り方を見て、本当に惚れたし、“海外の作品っていいなぁ”って、思いました。目覚めました!

稽古中は、確かに苦しかったし、大変なこともあったけど、今から思うと、楽しかった思い出しかない。「稽古場に行くのがいやだ」と思った日はまったくなかった。「明日も稽古、がんばろう!」って、いつも思えていたから。

それは“フリオのおかげだったなぁ”って、思ってます。

地球ゴージャスの岸谷五朗さんと、寺脇康文さんに「出会えてよかった」と思えたのと同じくらい、フリオは本当に出会えてよかったと思える人。自分の中で「恩師」だと思える人となった人です。

--この作品がなかったら、絶対に出会えない人でしたね。

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