信念を持って情熱的に…二面性を輝きにする漢、佐藤光留選手
私(池田)と同郷である佐藤光留選手はキャリア20年のベテラン。でも、その実績にあぐらをかくことなく、常に新しい挑戦をしている印象を受けます。
動きにキレがあり、いつも若々しい。さらに、文筆家という知的な一面も持つ多才なレスラーです。
「総合格闘技団体・パンクラス出身で、DDTプロレスリングで活躍し、現在は全日本プロレスというメジャー団体を主戦場にしながら、フリーとして奮闘している佐藤選手。
その生き方は“インディペンデント”そのもの。インディペンデントには独立独行、自由、依存しないという意味があります。
彼はどんなリングに上がってもインディーレスラーとして生きている気がします。インディーへの思い入れが深いことも事前に把握していました。
また私と同じく1980年生まれのレスラーを1名は入れたい、というのも選定した理由です」
時は2016年だったと思います。ある大会で、佐藤選手がメイド服コスプレで登場し、そこで初めて佐藤選手を知った私はびっくり。
その後、さまざまな大会で強さを見せる佐藤選手に、メイド服姿とのギャップを感じてグッときました。カッコいい…! と。そんな佐藤選手の魅力をジャストさんはこう語ります。
「佐藤選手は情熱的で真っ直ぐに突き進みながら、どこか偏屈なスタンスを持って生きている風に見えます。その二面性をプロレスで爆発させているのが魅力です。
実際に取材して感じたのは、彼は報われない、光が当たらないものに対するシンパシーを抱えていること。
周りが何を言おうと『俺はこれをやる』という信念を大切にしています。一方で、自己満足に走るのではなく、エンターテインメントに昇華できる才能があるのです」
高い経験値で、深みあふれるプロレスを見せる、ディック東郷選手
身長170cmで100kgに満たない、プロレス界では「軽量」とされるディック東郷選手。しかし、鍛え上げられた身体と堂々とした佇まいは、もっと大きく見えるからすごい。
私がディック選手を知ったのは、岩手にみちのくプロレスを見に行ったときのことでした。
「担当編集さんから『元WWEの選手を取り上げてほしい』と依頼があり、企画打ち合わせの段階で名前が挙がったのが東郷選手でした。
元WWE所属選手で、男気があって、経験も豊富。ご本人はレジェンド扱いされるのはお嫌かもしれませんが、この作品にはうってつけのレジェンドレスラーです。もちろん現在も活躍されている名選手。
レスリングマスターと呼ばれる彼のプロレス哲学に迫り、それを世間に対してわかりやすく伝えたいと考えました」
ジャストさんはディック選手にオファーした理由をそう語ります。魅力についてもたくさんあるようで、熱を帯びたコメントをいただきました。
「どんな対戦相手でも試合を成立させられるのはもちろんですが、試合を通じて対戦相手も、試合を見ている我々も、プロレスの深さを伝承しているんです。
見る側のレベルを自然と上げてくれる——それって簡単にはできないことだと思うんです。
レスリングマスターと呼ばれているディック選手ですが、ご自身がその評価に頓着していないのも特徴です。取材でお会いするとめちゃくちゃ腰が低くて、優しい。少年みたいに澄んだ瞳をしていたのも印象的でした」
実績と経験豊富な大ベテランでありながら、今もリングに上がり続けて、背中で生き様を見せてくれる名選手です。
強さと技術が武器。日本屈指のデスマッチファイター、竹田誠志選手
多種多様な凶器を用いて闘うデスマッチ。それに伴う流血は当たり前。プロレスの一ジャンルであり、その世界観を支持するファンが多く付いています。
中でもデスマッチファイターとして、超有名な竹田誠志選手。狂気を感じさせる大胆な戦いっぷりがファンの心をつかんでいます。
「今回、デスマッチファイターを1名取り上げたいと考えていました。となると竹田選手しかいないなと。
一時期は大日本プロレスとFREEDOMS(日本のデスマッチプロレス二大巨頭)のシングル王座を保持する二冠王に君臨し、人気・実力共にトップクラスのデスマッチファイターですから。
彼のレスラー人生を追うことで、令和のデスマッチ界も伝えられると思いました」
現在、竹田選手は、日本のプロレス界を代表するデスマッチファイターのひとり。ただ、ジャストさんが言う「かつて竹田選手は、自身が尊敬する葛西純選手のコピーと言われたことがあった」という話は、デスマッチファンの間では有名。
「しかし、自身のバックボーンである総合格闘技で培った強さと技術をデスマッチに持ち込み、唯一無二のデスマッチファイターとなりました。
その探求心とデスマッチファイターとしての生き様を遺憾なく表現しているのが魅力です。攻めるときも受けるときも豪快で、絶対に逃げない。その清々しさもまた彼のカッコよさだと思います」
竹田選手らしい、竹田選手にしか表現できないデスマッチを追求し、日々命がけでリングに上がる。そんな“非日常”の世界に誘ってくれる竹田選手のプロレスは、会場で一度目に焼き付けてほしいです。
「インディーは闇夜に輝く月のよう」
本書では、上に挙げた4人のほか、吉田綾斗選手、新井健一郎選手、マンモス佐々木選手、田中将斗選手のインタビューが収録されています。
「メジャー団体が光り輝く太陽だとしたら、闇夜に輝く月のような存在がインディーである」。ジャストさんは本書の「はじめに」でこう記しています。
インディーで活躍するレスラーの柔らかな煌めきが詰まった同書で、彼らのカッコよさにふれてみては。
■ジャスト日本さんプロフィール
1980年5月11日、福岡県出身(和歌山県在住)のプロレス考察家、プロレスブロガー。2017年9月と2018年3月に電子書籍『俺達が愛するプロレスラー劇場』(ごきげんビジネス出版)シリーズを刊行。
2019年より、大阪なんば紅鶴にて一人語りイベント「プロレストーキングブルース」を定期開催している。現在アメブロで「ジャスト日本のプロレス考察日誌」を更新中。
※写真はすべて個々の選手が提供。