悩み、迷い、何度も議論を重ねて踏み切ったオンライン上映
そういう意味で、検察庁法改正案の見送りやコロナへの対応など、政治への不信が募るいま、この作品が届いたことは大きい。
「まさかこんなタイミングで公開されるとは思っていなかったので、わたしも驚いています。
現政権でなにより問題なのは、嘘がまかり通ってしまうこと。これはほんとうによくない。社会のモラルを崩壊させてしまう。政治とはどうあるべきか、政治家の資質をどう見極めるのか、よく考えなければいけない。そういう時期に偶然ですけど、この作品が公開になった。それで多くの人が興味をもってくれたのかと思っています。裏を返すと、日本の政治への危機感の表れかなとも思います」
こうした劇場公開での大きな反響を得る中で、今回はオンライン特別上映会に踏み切った。ただ、これには正直悩んだという。
「悩みましたし、迷いました。スタッフと何度も議論を重ねました。
やはりひとりの映画人として、映画として作った以上、劇場でみてほしい気持ちがあります。多くのドキュメンタリー映画がそうであるように、この作品も、その瞬間起きることや小川淳也という政治家の言葉や行動を、劇場というひとつの空間で集中してきちんと受け止めて味わってほしい思いが強くある。
いまミニシアターは苦境にありますから、配信をしてしまうことで劇場へ足を運んでくれるお客さんを奪いかねない。そういう懸念もあったので悩みました。
でも最終的にはやってみようと思いました。そう踏み切った理由は、まず、このコロナ禍で、映画館に行きたくてもいけない人がたくさんいる。そういうみなさんに届ける機会を作りたいなと思いました。先日も大阪で舞台挨拶を終わったあとに、40代ぐらいの女性が声をかけてくださったんですけど、こういわれました。『実は両親と一緒に来たかったんですけど、大阪も感染者数が増えて、高齢でもあるのでちょっと今回は遠慮した』と。
それから、劇場公開を経て、配信やテレビの放送、ソフト化と作品はやがてみることはできるんですけど、ありがたいことにこの作品に関しては、『いま観たい』『早く観たい』というは声が続々届いている。わたし自身、確かにいまの政治状況にある中で観てほしい気持ちがある。
それで、配信の結果、さらに多くの人に興味を持ってもらえて、それがのちのち劇場にも波及するかもしれないと前向きに考えて配信上映を決めました」
決めた理由はもう一つある。
「バリアフリー上映をしたかったんですね。視聴覚障がいの方にもみてほしかった。あらゆる方にみていただける特別な機会になるかなと思っています」
今回のスペシャルトーク付きバリアフリー版上映イベントは、ライブ動画配信サービス「PIA LIVE STREAM」および「uP!!!」を使って実施。8月1日(土)の19時からスタートする。