銀杏BOYZの6年9ヶ月ぶりとなるフルアルバム『ねえみんな大好きだよ』が10月21日にリリースされることが決まった。本作は、オリジナルメンバー脱退後、峯田和伸1人になってから初めてのフルアルバムになるのだが、この6年9ヶ月を顧みれば、前作からここに至るまでの銀杏BOYZは休むことなくラジカルに動き続けていた。
銀杏BOYZ結成から17年間の活動の中でも、かなり濃厚な時間を過ごしていたわけだが、これらの経験や刺激が、銀杏BOYZにとって最も重要なアルバム制作にどう反映されたのだろうか。
また、誰もが新型コロナウイルス感染拡大による制限や影響を強く強いられている今、峯田はどんなことを考え、銀杏BOYZの表現に反映させたのだろうか──。
ここでは、こういった今の峯田が考えていること、アルバム完成までの経緯と思い、収録楽曲についてを徹底インタビュー。アルバム収録曲数「11」にちなんで11週にわたってお届けする(毎週水曜日更新予定)。第8回の今回は、「アルバムの軸になった曲」と峯田が語ってきた『生きたい』について聞いた。
言葉を交わさずに完成させたアルバム版『生きたい』
── 『いちごの唄 long long cake mix』の次に来るのが、アルバムの軸となる『生きたい』。
峯田 2005年の『人間』、2007年の『光』と続く、恥と傷の三部作の一つだけど、『生きたい』でやっと結実したような気がする。2016年にこの曲を出せたことで、気持ち的にも楽になったし、それまでの時代をやっと終えることができた感じだった。
前にも話したけど(第6回参照)、『生きたい』を出すまではメンバーが抜けていったことの喪失感とかキツさをずっと抱えていたんだ。でも、この喪失感を持ちながら改めて歌を歌っていく決意みたいなことが示せたし、自分の中でもこの曲で整理できたんだよね。
── ただ、アルバム版の『生きたい』は、シングル版よりも軽やかになった印象ですね。シングル版の『生きたい』は重くて、聴く側に対しても何かを突きつけられるような感じもありました。容易には向き合えないような。
峯田 力がある曲だからね。確かに、シングル版のままだと強すぎるから、ミックスとか色々考えて作り直すことにしたの。アルバムで他の曲と並べてみたとき、他の曲が薄く聴こえちゃったらイヤだなと思って。
シングルで出したときの『生きたい』はさ、キツさ、喪失感、悔しさとかが前面に押し出した音作りをしたけど、今回のアルバムでの『生きたい』は開けてる感じになってると思う。これはね、ピアノを弾いてくれたDr.kyOnさんの力が大きいんだ。
── Dr.kyOnさんとの間で「『生きたい』をもう少し開いた曲にしよう」みたいなやりとりがあったんですか?
峯田 具体的にkyOnさんと言葉は交わしてないの。2人でリハーサルスタジオに入って「まずはやってみましょうか」みたいな感じで、言葉とか議論をせずに音を合わせたんです。
その最初の練習でさ、音を出しながら「あ、kyOnさん、ここのフレーズをこう弾いてる」とか「ここを強くしてる」とかがこっちに伝わってきた。そのkyOnさんのピアノに合わせて、「じゃあ、俺はこうやってみよう」ってやっただけなんだけど、だんだん気持ち良くなってきてね。
バンドとか音楽をやっている人じゃないと伝わりにくいかもしれないけど、なんか楽器を持った者同士が、呼吸とか音だけで会話しているみたいな感じ? それがすごく気持ち良くて「あ、これが一番良いな!」みたいに思って、アルバム版ではああなった。
それとさ、『生きたい』って曲は確かに僕が作った曲ではあるけど、こうやって誰かと音を合わせて気持ち良くなると、勝手に自分の手元から曲が離れていくような感じもあって。
すごいよ、あの感覚。曲っていうものに命があるとして、作り手の意図とか思いとかに関係なく勝手に音楽というものが動いていって、踊り出していくような感覚が味わえたし、「これが一番正しいんだろうな」と思った。
だから、最初の練習でアレンジはすぐに決まっちゃった。そこでもkyOnさんと「今の良かったですね。2番は、静かなままでいきましょう!」とかも言ってないんだけどね。