Photo:小境勝巳

作り手の意図を飛び越えて音楽が勝手に動いていく瞬間

── 重要な内容で、しかも今回のアルバムの軸となる楽曲が『生きたい』とも聞いていたので、さぞアレンジには苦戦されたのではないかと思ったのですが、そうではなかったんですね。

峯田 曲が曲だし、「大変だったんじゃないですか」「色々苦労してここに至ったんだな」って思われるかもしれないけど、そういうわけでもないです。

これは本当にkyOnさんのおかげ。たったの2テイクで出来ちゃった『いちごの唄 long long cake mix』の話でも喋ったけど(第7回参照)、『生きたい』の中盤でバンドインが入ってくるところなんて、録音は1度だけで終わっちゃったからね。

── そうなんですか? バンドインしてからも結構時間が長かったような……。

峯田 うん。『生きたい』は全体が12分強で、バンドインしてからも6分くらいあるんだけど、あれは最初の1回目の音なんだよ。

逆に「じゃあ30分休んで、もう1回録り直しましょう」っつっても、あのグルーヴはもう出ないんだよね。これは『光』のときもそうだった。1回だけで終えたけど、だからこそいい音になっていると思う。

『生きたい』を軸としたアルバムの発表で、やっと新しい何かが始まる

── アルバム冒頭の『DO YOU LIKE ME』『SKOOL PILL』といったハードコア2曲だけを聴くと、特に『生きたい』がどういう印象になるのか想像できなかったですが、通して聴いてみると違和感なく確かに11曲の中心にあることがわかります。

峯田 聴いてくれる人がそう思ってくれたら嬉しいけどね。

正直言えばさ、まだ元メンバーが抜けていった喪失感、取り返しのつかないことになった感じは消えていないよ、僕の中で。でも、この恥さらしの姿のままだったとしても、前進するしかないという思いで作った『生きたい』がアルバムの中で軸になったことは本当に良かったと思ってる。

そしてさ、あのとき確かに銀杏BOYZ、僕自身の中で終わってしまったことがあったけど、『生きたい』をシングルとアルバムで出せたことで、やっと新しい何かが始まりそうな感じもしてね。

単曲としての『生きたい』もそうだけど、今回のアルバム『ねえみんな大好きだよ』は、僕の中では、「出すことで前に進める」という意味を持ったアルバムでもあるんだ。

もちろん、音楽は聴いてくれる人のものだから、自由に感じ取ってもらって、自分のものにしてもらうのが一番良いんだけど、ただその音楽を作った僕自身のことを正直に言えばね。『生きたい』を軸にして、良いアルバムが作れて本当に良かったなと思ってる。

Photo:小境勝巳

※次回へつづく

●全11回インタビュー:各回更新!

リリース情報

銀杏BOYZ ニュー・アルバム『ねえみんな大好きだよ』

【初回盤】
【通常盤】

10月21日(水)発売
品番:SKOOL-049 価格:3,300円+税

収録曲(全11曲)
01.DO YOU LIKE ME
02.SKOOL PILL
03.大人全滅
04.アーメン・ザーメン・メリーチェイン
05.骨
06.エンジェルベイビー
07.恋は永遠 feat.YUKI
08.いちごの唄 long long cake mix
09.生きたい
10.GOD SAVE THE わーるど
11.アレックス

音楽事務所、出版社勤務などを経て2001年よりフリーランス。2003年に編集プロダクション・デコ有限会社を設立。 出版物(雑誌・書籍)、WEBメディアなど多くの媒体の編集・執筆にたずさわる。エンタテインメント、カルチャー、 乗り物、飲食、料理、企業・商品の変遷、台湾などに詳しい。台湾に関する著書に『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)、 『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『台湾迷路案内』(オークラ出版)などがある。HP(http://deco-tokyo.com/