Photo:小境勝巳

── アルバムが出たばかりですけど、「ライブができない」ということを前提に、今後の活動に関してどんなことを考えているんですか?

峯田 早く新しいアルバム作りたいんだよね。

── は?

峯田 もうこの次のアルバムの構想もあるから。なんかね、今回のアルバムでちゃんと銀杏BOYZの“枠”みたいなものがわかったんだ。前のアルバム『光のなかに立っていてね』で出来ちゃってたんだけど、今回はそれがよくわかった。

枠っていうのは、スタイルって言っても良いけどさ、もうやることは決まってる。「これこそ銀杏」っていう枠みたいなものは変わらないんだけど、その上で新しい絵をどんどん描いていけば良いのができるし、今回のアルバムもそれをやったの。

だから、次のアルバムもそうなるだろうね。ただ、次は『いちごの唄』とか『恋は永遠』みたいなポップな楽曲ばっかりになるかもね。あるいは『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』みたいな曲も増えるかもしれない。

シンガロング。合唱。お客さんが全員歌ってて、僕のボーカルなんか聴こえなくなるくらいの感じ。ダイブだのモッシュだのだけじゃなくてさ、ライブの中盤では『アーメン・ザーメン・メリーチェイン』みたいな曲がかかってシンガロング。理想なんだよ、本当は。

今さ、若手でメジャーの日本のバンドもよく聴いてるの。どのバンドも売れてるだけあって、やっぱりすごい良いんだけど、歌詞をいっぱい詰め込んでいる曲が多くてさ。

もし自分がそのバンドのボーカルだったらキツくて歌えないだろうな……って思ったりすることも多いんだ。

それよりかは銀杏BOYZの場合は、少ない言葉、誰でも覚えられる量の言葉、歌いやすいメロディー、それとリズム。そういうシンプルでポップで少ない言葉の曲を作っていきたいんだ。だから、これからまた次のアルバムのことを考えなくちゃと思ってる。

消えていったエロ画像と、消えていった未収録曲

── 今回のアルバムは全曲シングルカットできそうな。でも、それでいてアルバム全体を通して聴くと、それぞれの調和があって、映画を観ているかのようでした。最後に、アルバム全体の構成で最もこだわったところを聞きたいのですが。

峯田 まぁ「全曲シングルカットできる」って言ってくれる人がいれば嬉しいけどさ、それは聴いてくれる人が決めることだから。作り手の僕が「全部シングルカットできるんですよ!」って言う話ではないよね。

たださ、今回の11曲に絞り込むために、消えていった曲もあるんですよ。例えば、スタジオに新曲を持っていく日にさ、「今日はどの曲を持っていくべきか」とまず考える。

そういうときに、「この曲にしようかな? いやでもやっぱり今はこの曲じゃねぇな。こっちにしよう。これをまずレコーディングしてみよう」みたいな。だから、だいぶ絞り込まれた楽曲ばかりではあると思う。

ところでさ、1日って24時間じゃないですか。日によって忙しさとか休める時間とかは違うけど、僕は絶対に決めていることがあるの。

「なんぼ忙しくても、1日のうち1時間は僕だけの時間を作る」っていう。誰にも邪魔されない僕だけの1時間なんだけど、この時間で何をしているかと言うと、インターネットでエロ画像をずっと探しているわけですよ。

僕が探しに行くのは主にエロ投稿サイトなんだけど、ただこればっかりは水モノなんですね。良いものが投稿されている日もあれば、全くない日もある。

またはさ、投稿サイトだからエロ度がきわどすぎると、管理人が投稿自体を削除してしまうこともある。こればっかりはタイミングなんだ。

それでさ、エロ投稿を仮に100枚見て「よし、これは気に入った。保存しとこう!」と思うのってせいぜい2枚くらいなんだ。たった2%。98枚も捨てて、たった2枚を選び込んで保存しているわけです。これだけでもすごい疲れるんだけど、そうすると、その2%の珠玉のエロ画像がたまっていくわけさ。

そうやって集めたエロ画像が、僕のスマホには今のところ4万枚入っているんだけど、でもある日冷静になって画像フォルダの中身を覗いていくとさ、あれだけ絞り込んだマイ・ベスト・コレクションのはずが、どういうわけか、この中でも差が出てきてしまうわけ。

「なんだよ、これ!」「どうして、こんなの保存したかな!」みたいな。そうするとさ、その絞り込んだエロ画像の枠の中でもカーストが生まれるんだよね。「こっちだったら、こっちのほうが断然エロいし、抜ける!」みたいな。

つまり、長くなっちゃったけど、アルバムの選曲もこれと同じなわけさ。いくら絞り込んだベストな曲ばかり並べても、やっぱりその中でも生まれるんだよ、カーストが。

だから、聴いてくれた人からもし「どの曲も良いですね。どの曲も好き!」って言われることがあったら、それは絶対ウソだと思う。だって自然の摂理から反してるでしょ。どれか好きな曲もあれば、そうでもない曲もあるはず。そこは自由に感じてくれたら嬉しいね。

またさ、さっきの話で捨てた98枚っていうのも全く無駄な98枚でもないんだ。実は98枚のこいつらがいてくれたからこそ、2枚が引き立ったんだっていう。

誰かがこの話を聞いたら「何バカなことやってんだ。終わってるわ、マジで」と思うかもしれない。でも、ここまで必死になって集めたものは徒労ではない。捨てた98枚のおかげで、聴いてくれる人が「なんかいいな」と思ってくれたり、胸に引っかかってくれるんじゃないかと思うわけですよ。わかりますか?