『No.9~』は、みんなでベートーヴェンという船を漕いでいるような作品
2015年の初演、2018年の再演に続く再々演となるが「表現することは同じ」と変化を自らは意識しない。それでもおのずと「お客さんの目に映るもの、感じるものは確実に違うものになるはず」という確信がある。
“座長”という立場へのスタンスも「(意識することは)全くない。全く座長っぽくないです(笑)」と変わらないし、カンパニーへの信頼も揺らぐことはない。
「僕、意外と人見知りで、ダメなんですよ。恥ずかしくなっちゃう(苦笑)。ベタベタした関係も好きじゃないし、芸能人としてもずっとそういう感じでやってきてる。僕はこの作品では中心で暴れている“ゴジラ”ですからね。周りの方が大変だと思います。
そうやって中心で暴れるということもこれまでやってきてなくて、どちらかというと『まあまあ』となだめるタイプなので、それが新鮮でもあります。ピアノの末永匡さんの存在もすごく大きいですね。
一緒にベートーヴェンを演じているようなイメージです。この作品は、みんなでベートーヴェンの頭の中の出来事を演じているようなところがあるんです。お客さんの目に映る形で存在しているのは僕だけど、みんなでベートーヴェンという船を漕いでいるような感じがします」。
本作で稲垣が演じるのは、ベートーヴェンが30代を迎える1800年から40代、そして第九が完成する50代の半ばにかけて。40代は苦しみながらも第九の着想を得る時期となるが、稲垣にとって40代は?
「いろいろ悩ましいですよね。40代って体力の衰えや精神的な部分でも変化を感じる時期。人生の折り返しを迎えて今後、どう生きていくのかを考える重要な時期だと思います。
僕自身、グループが解散して環境が変わったりもしたのでなおさら(変化や重要性を) 感じますけど、自分の選択によって新たな道を進んでいるしすごく恵まれた道を歩めているなと思います。
もちろん、20代の頃に思い描いていた通りのこともあれば違う部分もあるし、でも当時から思い描いてる通りの未来になるなんてことはないと思っていたし、そうなることが幸せとも思ってない。
未来は予測がつかないし、変わっていくのは当然なので、そこに動揺はなかったです。でもトータルで見ると、好きな仕事ができて健康で、周りに恵まれて愛し愛されて生きているという意味で、幸せで思い描いた通りなのかなと思いますね」
スタイリング:黒澤彰乃
ヘアメイク:金田順子
公演情報
木下グループpresents『No.9 ー不滅の旋律ー』
演出:白井 晃
脚本:中島かずき
音楽:三宅 純
出演:稲垣吾郎 / 剛力彩芽 / 片桐仁 / 村川絵梨 / 前山剛久 / 岡田義徳 / 深水元基 / 橋本淳 / 広澤草 / 小川ゲン / 野坂弘 / 柴崎楓雅 / 奥貫薫 / 羽場裕一 / 長谷川初範 / 他
2020年12月13日(日)~2021年1月7日(木)
会場:東京・TBS赤坂ACTシアター