撮影:源賀津己
描き続けてきたテーマが凝縮された“隠れた名作”
SFなど、超常的な世界のなかで生きる人々を描くことの多い前川知大がPARCO劇場オープニング・シリーズに選んだのは、2015年に自身の劇団で「語る室」として上演された作品をベースとした『迷子の時間 -語る室2020- 』。
「僕がこれまで描いてきたテーマが凝縮されているけれども、ふだんの僕の作品に比べるとSF的な部分が強くなくて、ごく日常が描かれた芝居。
普段のイキウメの作品は、世界そのものの見え方が変わっていくものが多い。けれどもこの作品は人間ドラマというか、人の感情に寄り添った作品ですね」
2015年に上演された『語る室』は劇団の本公演ではなく、番外的な作品として上演されたもの。『太陽』や『散歩する侵略者』、『関数ドミノ』など、繰り返し上演されたり映画化されたものと比べると、知る人ぞ知る作品だ。
撮影:源賀津己
「僕の中では“隠れた名作”だと思っています。書きはじめたときには『語り』を主題にした長編を作ろうということだけだったんですよ。そこからスタートして、脚本にはかなり苦労した記憶があります。
普段は全体の設定や構成から考えるタイプですが、この作品に関しては登場人物の人生、履歴を最初に作り込んで書いていった。
時間をかけて、初心に戻って書いた作品で、苦労した分できてみたらいい内容のものになった。だからもう一度やりたいとも思ったし、やるとしたらタイトルも内容を表すものにしたいと思って『迷子の時間』という新たな作品として提示したんです」
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