何も考えずにやるのが、一番いいのかもしれませんね。

--確かに、一周回って、何も考えずにやってみるのもいいかもしれません。

そう、一周回って。それは昨日、そう感じました。

稽古序盤からは、言われたことをいっぱい考えて、自分で自分の声を録音して、「ここをもうちょっとこうした方が、目をつぶって聴いている人にも分かるかな?」とか。いろいろメモを書き込んで、練習していたんです。

だけど、聴いているスタッフの方々には、まだまだ伝わってなかったみたいで…。そう思うと、書き込んだことを1回全部消して、そのうえで台本を読みながら、相手の台詞を聴いて、次の自分の台詞がその時にどう出るか。リアルにやるのが一番いいのかなって。

そういうプランもやってみようと思って。だけど、正直、正解は分からないです。

--もしかしたら朗読劇は、舞台やミュージカルよりも、格段に難しいのかもしれませんね。

そうなのかもしれないですね。もちろん、楽しいこともあるんです。だけど、難しいです。

でもね、これが身につけば、ミュージカルや舞台となったときに、より言葉の重みだったりを伝えられると思うんです。

確かに、『ウエスト・サイド・ストーリー』をやっていたときに、「あんまり手振り、身振りをしないほうがいいよ」って言われたんです。それはアニータ役だったからなんですが。

「手振り、身振りをつけちゃうと、すごく子供っぽく見えちゃうから。なんにもいらない、ただスン、スンって歩くだけで、余計な動きをしないで」

って、言われたのを思い出して。

ああ、声だけで気持ちを伝えられるようになるならば、余計な動きは必要なくて、芝居が成立するんだなって、すごく今、学べている気がします。自分はそういうところが足りていないんだなってすごく思う。

--確かに、今の難しさは、次の舞台やミュージカルに生かせるかもしれないですね。

本当に難しいですが、そうですね。

「自分が経験したことを全部生かせる日って、いつなんだろう?」

って、すごく思う。

行く場所、行く場所で違うことを求められ、教えられ、言われて。「なるほど」と、その時は思うんだけど、次の現場でそれを生かせるのかといったら、そういうわけでもなかったり。

すごく難しいけど、そうやって、回ってるんだなって思います。

--ひょっとしたら、一生そうかもしれません。

そうですね…って、それはツラいっ! メンタル、どんどんすり減っていってるんだからー!(泣笑)

--でも、「目をつぶっている人にもわかる芝居」って、改めて難しいんだなと思いました。

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