3.街や人の記録を残す

閉店して数年経っていた神田小川町の額縁専門店「優美堂」の建築を改修、新たな事業計画や運営などを市民とともに行うプロジェクトが、中村政人による《神田小川町・優美堂再生プロジェクト ニクイホドヤサシイ》だ。

中村政人による《神田小川町・優美堂再生プロジェクト ニクイホドヤサシイ》

「ニクイホドヤサシイ」という言葉は、優美堂の電話番号の語呂合わせにちなんだもの。中村とスタッフは優美堂に残された膨大な数の額縁を使い、「富士山」と「優しさ」をテーマにした絵画を制作・販売し、その売上は活動費に充当される。

中村政人による《神田小川町・優美堂再生プロジェクト ニクイホドヤサシイ》
中村政人による《神田小川町・優美堂再生プロジェクト ニクイホドヤサシイ》 屋上に設置されたアーティストのo-junによる作品

優美堂からほど近いレインボービルの9階に設えられた《東京Z学研究所》は、中村政人が所長を務める「Z学」の研究所。

Z学とは、路上観察学や考現学の先にある学問として中村が位置づけたもので、展示会場では無名の人々の行為に着目し、とどまり続けた行為の結果を収集、展示している。

中村政人《東京Z学研究所》
中村政人《東京Z学研究所》

会場には、かつてはポールを置くおもりであったものや、崩壊寸前の三角コーンなどを、かつての状況を示す写真とともに展示し、そのものの機能や意味、価値などに思いを巡らせるものだ。