撮影:山口真由子

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けているクリエイターを支援することを目的に制作された、12人の監督による12本のオムニバス映画『DIVOC-12』。

“DIVOC”は“COVID”を反対に並べた言葉で、「12人のクリエイターとともに、COVID-19をひっくり返したい」という想いが込められている。

日本映画界を代表する藤井道人監督、上田慎一郎監督、三島有紀子監督と、一般公募より選ばれた新人監督含めた9名が集結し、3チームに分かれて「成長への気づき」「感触」「共有」というテーマを掲げて制作。藤原季節は三島監督が手がけた「共有」がテーマの『よろこびのうた Ode to Joy』に、富司純子とともに出演した。

ポスティングのパートと年金で、ひとり細々と生きる75歳の冬海。ある日、海での散歩の途中、東北弁を話す優しい青年・歩と出会い、とある仕事に誘われる。

その2人の数日間のやり取りを描いた10分程度の作品に、藤原は撮影10日前から演じる歩になりきって日々を過ごしていたほど、入れ込んでいたという。その想いに至った心境や、現場で感じたこと、またテーマの「共有」にまつわるエピソードなどを語ってくれた。

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プライベートでも歩の衣装を着たまま生活していた

撮影:山口真由子

――本作への出演の経緯を教えてください。

僕が出演した『中村屋酒店の兄弟』(2020年公開)という45分くらいの短い映画が、「(第30回)東京学生映画祭」でグランプリをいただいて、そのときの審査員が三島有紀子監督でした。そのご縁で知り合ったので、その時のことも大きかったのかもしれません。。

――演じた歩は、短編ということもあり、物語の中だけではどういう人なのかわからない部分も多かったと思いますが、どのように役作りをしましたか?

確かに台本から読み取れることは少なかったです。でも、初めて三島さんとこの作品の打ち合わせをしたときに、歩の年表をいただいて。そこに、妹がいて、何歳のときにこういうスポーツをやっていて、この部活に入っていて、何歳のときに東京に出てきて、とかが書かれていました。

その年表を自分でも埋めていい、と言われていたので、衣装が決まってからは、プライベートでも歩の衣装を着たまま生活をして、自分の中に歩をなじませていきました。

そうすることで「どうしてこのセリフなんだろう?」みたいな疑問が埋まっていきました。最初に台本を読んだ段階では、余白が多くてなぜこのセリフなのか、というのが自分の中で結びつかなかったんですけど、三島さんとも相談しながら、一つひとつ埋めていきました。

三島有紀子監督作品「よろこびのうた Ode to Joy」 ©2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

――そんなに細かいところまで決めて演じていたのですね。ただ観客側はその辺りが一切わからないわけですが、それについてはどう考えていましたか?

スクリーンの向こう側の人にどう届くか、ということは、僕自身はあまり考えていませんでした。僕にとっては、歩という存在をどれだけ信じられるかが重要なので、目には見えないもの、映画の中では描かれていないことを埋めていくことが重要でした。

それを埋めることで信じる気持ちが強くなる、というか。自分の中のそういう気持ちが弱いと、カメラの前に立っていても不安になるんです。