楽しいと思える限りは、この仕事を続けていきたい
俳優デビューから6年。22歳の神尾楓珠のもとには次々とオファーが舞い込んでいる。けれど、意外なことに本人は「根本的に、性に合ってるとは思ってないんですよ」と役者業について語る。
「根暗だし、面倒くさがりだし。高校のときとか、声を出すのも面倒くさくて。そんな日は、今日は1日誰とも喋らないって決めて。教室で話しかけられても、無言でリアクションだけするみたいなこととか普通にありました(笑)」
だから、華やかなスポットライトを浴びている自分に、今でも違和感を覚えるときもある。
「去年、最初の緊急事態宣言が開け、仕事が再開したときとか、もうこの仕事には戻れないって本気で思いました。自粛期間中は完全に仕事を忘れて普通に生活してたから。周りの目も気にせずすんだし、自分のやりたいことだけやって、すごく楽しくて。
それが急にまた仕事ですってなったとき、窮屈だなって感じがして。このまま仕事できるかなって悩んだ時期もありました」
それでも、神尾楓珠は今日も分刻みのスケジュールをこなしている。彼がまだ俳優・神尾楓珠でいるのは、知ってしまったからだ、この仕事の楽しさを。
「僕は普段から自分の感情とかあんまり出ない方なんですけど。それを思い切り出せる場所が、芝居。演じていると、自分の知らない感情が出ますし、自分が今までやったことのないような表現が出てくるときもある。そういうのが楽しくて、辞めずに続けているっていう感じです」
今でも自分の演技は「下手くそだなって思う」と言う。でも、経験を積んで「前よりは多少自信を持ってできるようにはなりました」とも。
欲や野心はない。焦らず、気張らず、自分のペースで進んでいければいい。素の神尾楓珠は、ミステリアスな外見に不似合いなほどマイペースな22歳だ。
「あんまりこんなふうになりたいというのはなくて。それよりも楽しんでやれるのがいちばん。何かになったり、何かをなしとげたりすることよりも、自分の人生が楽しくなることの方が大事だから。楽しんでやれる限りは、この仕事を続けていこうと思っています」
映画『彼女が好きなものは』は公開中。
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