公開中の映画『そして、バトンは渡された』。原作は累計発行部数110万部を突破している本屋大賞受賞の同名小説。
苗字が4回も変わるという環境にありながら、ポジティブに生きる主人公・優子を永野芽郁、優子の血がつながらない父親で、料理で愛情を伝えようとする森宮さんを田中圭、そして物語のキーパーソンとなる、シングルマザーで自由奔放な魔性の女・梨花を石原さとみが演じる。
お互いを「森宮さん」「優子ちゃん」と呼び合い、父と娘でありながら親友同士のような、絶妙な距離感と空気を生み出した永野芽郁、田中圭に話を聞いた。
「優子」という役をできてよかった
――原作は本屋大賞を受賞したベストセラー作品ですが、脚本を読まれた感想と原作を読まれてどのようにインスピレーションを膨らませられたか、お聞かせください。
永野 私は脚本より先に原作を読んでいたんですけど、涙するシーンもあるし、感動もするけど、それがすべて「温かい」という感情の中で動くものだなあと思いました。
もちろん原作と脚本では違う部分もありますけど、優しいと思ったものが、脚本でも描かれていたので、その原作の良さを自分の中で持ちつつ、演じられたらいいな、と。
――永野さんはお母さまから「この作品が実写化されたら演じてほしい」と言われていたそうですが、普段からそういったお仕事に関するコミュニケーションをとられたりするんですか?
永野 今回が初めてでした。だからこそ私もやれたらいいなと思ったし、実現できてよかったです。
――今回、演じられた役柄とご自身の共通点はありますか?
永野 私が演じた優子との共通点は割と何事もポジティブに捉えてるところだったり、 どんなことがあっても笑顔を心がけようとしているところは、共通点だなと思います。
――演じられているときに苦しかったり、優子に寄り添いすぎてしまったことはありましたか。
永野 優子ちゃんが「本当はこうしたかったのに」と思っているところは私も実際にそう思っていました。でもそれは優子ちゃんの気持ちだけだから、なんですよね。周りの人のことを考えたら、自分本位な考えなのかもしれないという葛藤もあったりして。難しいな、と思うシーンは少しありました。
田中 僕と森宮さんは、父親であるという大きな共通点があったので。もちろん娘と年が近いとか血が繋がってないというのはありましたけど、大きなくくりとして大丈夫だろう、という感じで現場に入りました。
でも、実際は自分の実体験が全然参考になリませんでした。これはダメだと思って、自分の感覚を忘れて、イチから森宮さんを作り直しました。
――1人の男として見て、その森宮さんっていい男なんだな、と感じたところはありますか。
田中 それで言ったら森宮さんだけじゃなくて、優子ちゃんの父親はみんないい男ですよね。 いろいろと理解がありすぎる!というツッコミは入れたくなります。
――森宮さんが優子ちゃんに愛情を注いで責任を持って育てているのは、1人の男としてみてどんなふうに感じられましたか?
田中 とても楽しいと思うんです。だってあんなかわいい娘がいて、絶妙な距離感でずっと彼女を応援できて、きっとあの2人は、これから先もずっとあの距離感だろうし、幸せだなって。
森宮も言っていますが、生きる意味をくれた、って。彼にとっては本当にそうなったんだろうな、と思います。