西門1に至る通りを歩いていると、海鮮鍋の店が目立ってくる。韓国の食べ物はなんでもテイクアウトや出前ができることで知られているが、コロナ下でとうとう鍋もその対象になった。明太子や白子、白身魚の切り身が盛られたホールケーキのようなケースが店先にいくつも並んでいる。

家で鍋に移し替えてゆっくり食べるのもいいが、筆者はやはり湯気がじゅうまんしている店内で食べたい。もちろん冷えたソジュ(韓国焼酎)のグラスを乾しながら。

海鮮鍋の店先で火にかけられている鱈と白子の鍋

右手の路地に入ると、そこはかつて金浦や仁川の空港から直行した日本の人も多かったユッケ通りだ。

韓国のユッケは長らく高級焼肉店のサイドメニュー的なポジションだったが、2017年から現在まで毎年ミシュランに載っているユッケ専門店が脚光を浴びたこともあり、ここ数年は若者も多く訪れるようになった。

ユッケ(200グラムで約1700円)は、下に梨を切り刻んだものが敷かれている。この二者も相性抜群

最近は単なるユッケではなく、ぶつ切りにされてもグニャグニャ動いている活きダコ(サンナクチ)をプラスしたユッケ・ナクチ・タンタンイ(約3000円)が人気。

さらに、たっぷりのユッケを海苔とごはんで巻いたユッケ海苔巻き(約900円)も女性に受けている。

日本のすき焼きのように卵を溶いたものにつけて食べるとたまらない旨さだ。

西門1に至る通りに戻り、さらに進むと右手に細い路地が何本かのびている。ここを入って行くと、広蔵市場の商店主や従業員に人気の出前メインの大衆食堂が点在している。こういう店が安くて旨いのだ。

もちろん一般人でも利用できる。朝食と昼食がメインなので朝7時から午後3時くらいまで営業する店が多い。

渡航が自由になったら、日本の飲兵衛や食いしん坊たちといっしょにあれこれつまみながら一杯やり、こんな食堂でしっかり締め食いしたいと思っている。

フォトギャラリーご飯も美味しそう♪「仁峴市場」の魅力を写真でさらに見る
  • 「チョンファ食品」には簡単に調理してもらえるつまみもある。これは春雨を海苔で巻いて揚げたもの
  • 仁峴市場の北端から2つ目の路地を入ったところにあるシュポ「チョンファ食品」
  • 「ウリ食堂」のチョングッジャン(納豆汁)定食
  • 「ジンミネ」は海鮮が旨い。これはアサリ鍋
  • 「ジンミネ」の女将と息子さん

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鄭銀淑:ソウル在住の紀行作家&取材コーディネーター。味と情が両立している食堂や酒場を求め、韓国全土を歩いている。日本からの旅行者の飲み歩きに同行する「ソウル大衆酒場めぐり」を主宰。著書に『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』『釜山の人情食堂』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』など。株式会社キーワード所属。