熊徹役は、これまでの経験を活かして丁寧に
合同インタビューでは様々な質問が飛び出したが、ミュージカル版だからこその本作の魅力については、脚本・歌詞の高橋知伽江が「生さぬ親子の絆という背骨のしっかりしたストーリーなので、脚本に対しての不安はなかった。
ただ劇団四季がミュージカル化することを考えると、殺陣のシーンは映画にもたくさんありますが、ミュージカルとしての重要な要素のひとつであるダンスを意識して取り入れ、エンターテインメント性をもっと出したいと考えました」と話し、
演出の青木豪が「映画では例えば押し黙る表情をアップにすることでその人の感情の高まりを伝えるところを、ミュージカルでは歌で表現する。それを僕が演出としてどう視覚化するかという点と、演劇的にお客さんの想像力に訴えかけて広げていくにはどうするかという点を主軸に作っています」と話すなど、作品の構造について言及。
また青木は、美術プランについて問われ「知伽江さんからいただいた台本には、熊徹の家と猪王山邸、さらにそのふたつが同居しているシーンがあったり、渋谷と渋天街が同居するシーンがあったので、“同居している”ということを見せるのに〈二重盆〉はどうだろうと美術の石原敬さんのアイディアがあり、僕も面白そうだなと思って採用した」と具体的に解説もした。
役の魅力を問われた熊徹役候補のふたりは、田中彰孝が「熊徹は『ライオンキング』のムファサ(父王)のような役。僕は『ライオンキング』のシンバ役が長かったので、こういう役に憧れが強かった。
年齢的にムファサや熊徹の方に近くなり、憧れから入ったものが、だんだん自分の身体に染みついてきている状態。稽古序盤は憧れを演じようと作りすぎてしまっていたが、それをそぎ落とすことを心がけて稽古をしています」と語り、
伊藤潤一郎は「熊徹というのは、この作品を見た人みんなが好きになってしまうようなキャラクター。それを演じられるワクワク感がいまだにある。僕は四季では父親役や乱暴者だけれど気のいいアンちゃんといったキャラクターを多く演じてきた。
そういう経験が今回のチャンスに繋がったのだと思うが、吉田社長には『アドバンテージを取った試合はそこで油断してしまうことが多いので、丁寧にやっていけるといいですね』と言っていただいた。稽古場では大胆に、でも家に帰ったら冷静に『それでいいのか』と自問しながら丁寧に作っていきたい」とそれぞれ熱く意気込んだ。