よそ者ではなく、一人の表現者として、チームの一員として
――ドキュメンタリーの中のインタビューで、始めは松也さんや、周囲の方に迷惑をかけられない、という気持ちが大きかったけど、途中から自分がどう表現するか、ということが優先されていったとお話されていました。その心境の変化は何がきっかけだったのでしょうか。
まずは僕のような一般人が歌舞伎に出るということが、そもそもとんでもなく無謀だし、普通にあんな大きな役をもらえるわけないんですけど、僕と松也くんとの関係とか、今まで僕が積み上げてきた俳優としてのキャリアとか、そういうものを考慮していただいて、本当に、特別にやらせていただいんです。
そんな中で僕が詰まらないことをやってしまうと、まずはこの企画を思いついて行動に移した松也くんに迷惑がかかるし、この『挑む』を守って、大きくしてきたメンバーにも、そしてもっと大きなことを言えば、歌舞伎界にも迷惑がかかる。
きっと今回初めて歌舞伎を観る人もたくさんいる中で、僕のせいで「歌舞伎ってあんまり面白くないね」とか思われてしまったら大変だから。とにかくちゃんとやらなきゃ、迷惑かけちゃいけないっていう想いが先行していたんです。
だから最初の頃はゲストな感じというか、雑な言い方をするとよそ者という感じが自分の中にあったんですけど、稽古を重ねていくに連れて、みんなが本当に一生懸命に、僕に技術を渡してくれるんですよね。僕から片時も目を離さずに、メイクや衣装のことから、お芝居のこと、動きのこと、全部渡そうとしてくれる。
そんな中で、自分をいつまでもよそ者と思ってちゃいけないな、と。よそ者ではなく、一人の表現者として、チームの一員として、ちゃんとやらなくちゃいけないって思ったんです。迷惑をかけちゃいけない、ではなく、お芝居を面白いと言わせなくちゃいけないって。
生田斗真が歌舞伎をやりました、「まあ良かったよね」では失敗なんです。「生田斗真って歌舞伎役者じゃん。歌舞伎ももっとやればいいのに。彼の歌舞伎、もっと観たいよ」って言わせなければ成功ではないんです。
そこまで行くためにみんなの力を借りて、一生懸命やったので、それを世界の人たちに観てもらえたらと思っています。
――最後に本作と合わせて配信される本編の見どころも教えてください。
僕も普段からよくご一緒にお仕事をさせていただいてる、劇団☆新感線の『ゲキ×シネ』とかを撮影しているチームと組んだんですけど、(会場となった)本多劇場に今まで入ったことのないような台数のカメラを入れて撮影をしたので、かなりダイナミックな仕上がりになっていると思います。いわゆる歌舞伎座で上演されているような歌舞伎を撮影したようなものとは、ちょっと違う映像作品に仕上がったと思いますね。
もともと休演日だった日を撮影日に変更して、そのために急遽、お客さんにも入っていただいて、この作品のためだけに撮った映像もあります。普段だったら撮れないような、舞台の上にカメラを乗せて撮った、舞台から見た踊りや動きもあるので、ドキュメンタリーと合わせてご覧になってほしいですね。
*
本作は生田さんが新作歌舞伎に挑戦する日々を追ったドキュメンタリーですが、「歌舞伎」自体には馴染みがなくても、生田さんの心境を感じることでその魅力が伝わってきます。また、生田斗真、尾上松也という二人の友情物語としても見応えのある作品となっています。
そして何より、11才からジャニーズJr.として芸能活動を開始し、さまざまな経験を積んできた生田さんが、36歳になって初めてのことに“挑む”姿は、観た人に何らかの気持ちを湧き上がらせてくれる力があると思います。
作品紹介
Netflixドキュメンタリー 『生田斗真 挑む』
2022年6月16日(木)より全世界独占配信開始