若宮は狙ってやっていた部分もあります
――改めて、獅子雄、若宮というキャラクターに対して感じたことを教えてください。
ディーン:誉獅子雄は、そのために一つ新しいスイッチみたいなものが必要なキャラクターでした。セリフ回しや立ち振る舞いが普通じゃないというか、例えるとF1の感覚というか。
無意味にスピードが速いとか、スペックが高いことが、変人・奇人みたいな感じに映るといいな、と思っていました。必要なかったかも知れないけど、長台詞を呼吸しないで全部言い切ってみたり(笑)。今思うとドラマ版のときは本当に試行錯誤していたな、と思います。
リアルな自分は静かに生きていて、獅子雄みたいに周りに迷惑をかけまくって、奇行を重ねるというのはないので(笑)。ただそれが周りから見てイタイ感じになるのは嫌だから、結果的にちょっとこの人は普通じゃない、というふうに見えることを考えていました。
それが一つひとつの行動を極端にすることで、一番わかりやすく伝わると思って準備していったことを覚えています。
岩田:若宮はわりと怒ったり、泣いたり、笑ったりと喜怒哀楽がわかりやすく、感情のふり幅が出せる役だったのですごくやり甲斐があると思っていました。
あとは、このミステリーサスペンスというテイストの作品の中で、ちょっと箸休め的な、観ていただく方にほっこりしていただくような役柄でもあったので、そこは西谷さんとも相談しながらですが、狙ってやっていた部分もあります。
西谷さんが絶妙なさじ加減でさばいてくださるので、それが重厚なストーリーの中に違和感なく、サブリミナル的に出せたと思っています。
――会見ではそんな若宮に、ディーンさんが母性本能をくすぐられたとおっしゃっていましたね(笑)。
岩田:狙ってやっていますからね(笑)。僕というか、西谷さんが、ですけど。
――若宮のそういうかわいらしい部分は岩田さんの中にもありますか。
岩田:どうなんですかね(笑)。でも僕、意外にドジですし、落とし物とか忘れ物も結構多いです。
――久しぶりの共演でお互いに変わったな、と思うところはありましたか。
ディーン:印象が違うってことはないですね。やはり1クール一緒にドラマを撮って、ずっと一緒に居たので、大体の人となりはわかるので。ただ今回、松山でロケがあったんですが、岩ちゃんの荷物の少なさには驚きました(笑)。これは本当に新しい発見だったと。
岩田:あははは(笑)。言われるまでわからなかったんですけど、そうみたいです。本当に必要最低限のものしか持って行かないので、確かに少ない方だとは思います。
――今回、獅子雄と若宮は一緒に行動せず、それぞれに離れた場所から事件に関わる場面も多かったですよね。
ディーン:距離が離れていることに関しては、物語の中に自然とその必然性が落とし込まれているな、と思ったので、リモートでそれぞれに謎を解いて前に進んでいくことには違和感もなく、腑に落ちていました。
岩田:“リモートバディ”と言っていたんですけど、たまたまですが今のご時世にあった感じになりましたね。
ただ実質的な距離は離れていましたけど、一緒に事件を解決していく上ではドラマのときよりもバディ感があったというか。若宮の“やらされてる感”が少なくなっていたので、あまり距離は関係ないと感じていました。
ディーン:ドラマ版のときは、謎を解くことに対しての獅子雄の好奇心や抑えきれない衝動に、若宮が無理やり付き合わされている感があったと思うんですけど、映画版においてはより主体的というか、独り立ちしていくような側面もありましたね。バディとしてお互いの知恵や能力を持ち寄っていくところが、魅力じゃないですかね。