多くを学び野望が広がった『カムカムエヴリバディ』

城田優 撮影:荒川潤

――あらためて、この作品において城田さんの心に一番響いたものとは?

先ほども言ったように、圧倒的にポジティブ・エネルギーが大放出されていること。マイノリティーとして生きるローラが、ありのままの自分でいいんだと自らを受け入れて、周囲に対しても「皆ひとり一人、ありのままでいいんだよ!」とポジティブ・パワーを振りまく。そして最後に皆のマインドがひとつになる、その感覚が好きなんです。よし、やってやろう! という気持ちになるんですよね。

――ぜひ劇場で、同じ感覚を味わいたいと思います。ここで『キンキーブーツ』のお話から離れて、昨年11月から今春にかけて放送されたNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』でのナレーション&出演について伺いたいのですが……。城田さんにとってどのような経験でしたか?

そもそも、ナレーションだけでずっと物語を語り紡いでいくこと自体、経験がなかったんです。最後に出演することは分かっていたんですけど、自分が何者かってことも最初は分かっていなかったので。物語が進むごとに定まっていって、どうやら俺はひなたの初恋の人らしいと(笑)。とにかく、この物語を客観的に伝えるという役目、そして英語と日本語で、というところが一番考えましたね。

主観的になり過ぎても、引き過ぎてもいけないし、その絶妙なラインを目指さないといけない。寄り添いすぎると感情移入しちゃうし、そこらへんは難しかったですね。とくに序盤はどんどん人が亡くなったりして、その映像を見ながら、こっちも苦しくなって涙がこみ上げて来たりするんですよ。

可哀想!って思っちゃうと、それが声に出ちゃうんですね。そうすると監督から「城田さん、もうちょっと……寄り添うけど、感じ過ぎないで」って。本当に、バランスがすごく大変でしたけど、とてもいい経験をさせてもらったと思います。

語学という、自分の武器のひとつでもあると思っているものを活かせる場所、機会をいただけたことがありがたいですし。『カムカム〜』のほか、映画『コンフィデンスマンJP-英雄編-』でも僕、英語とスペイン語しか喋ってないんですよ。あ、俺、海外の作品も出られるなって、今はそういうマインドになっていますね。自分のポテンシャルを感じて、試しに外に出てみようと思わせてくれる、『カムカム〜』はそんな経験をさせてくれた現場のひとつでした。