――法廷バトルという聞きなれないカテゴリの舞台だけに、苦労もあったのでは?
兼崎「説明がややこしいですね。何が起きてどうしてこうなったのかという説明部分が難しくて把握するのが大変です」
和田「セリフを覚える以前に、その状況をまず自分で理解しないといけないんです」
兼崎「最近通し稽古を始めたんですが、通してやると疲労感がすごいです(笑)。法廷シーンはテンポよく進めないといけないのでセリフも早口になりますし、自分たちのテンションが上がっていくのでうっかり他の人のセリフを飛ばしちゃいそうになりますね」
――法廷ではお二人のかけ合いがメインになりますよね。息をぴたりと合わせるのは大変なのでは。
和田「基本、アイコンタクトですね。"次(のセリフ)は、お前だぞ!"って(笑)」
兼崎「視線はけっこう合いますね。ライバル同士なんだけど、助けあってるみたいな感じ。それでもセリフを忘れたら、傍聴人たちにざわざわって声を出してもらって、その間に思い出します(笑)」
――舞台ならではの魅力はどこにあるとお考えでしょうか。
兼崎「舞台って基本的には常に動いていますよね。だけど、法廷シーンは動きが少ないんです。その分、セリフのテンポやテンションや2人のかけ合いで魅せていかないといけないし、そこが魅力だと思います。逆に、法廷シーン以外は歌やダンスを入れたりしています」
和田「舞台だとお客さんは普通観客ですよね。だけどこの作品に関してはお客さんは傍聴人でもあるんですよ。本当の裁判を見ているかのように、僕らの舞台に参加しているような感覚を持ってもらえると思います。参加型って言うと、ちょっとベタなんですが」
兼崎「お客さんにも法廷で一緒に推理してもらうっていうのが面白いですよね」
和田「キャラクターでいうなら、御剣ってクールなイメージが強いと思うんですが、舞台では気持ちが入るから声も大きくなるし、冷静なだけではいられないところもあるんです。そういうところはむしろ御剣が自分に近づいてきた感覚ですね」
兼崎「感情を出していくとそうなるよね。たとえば映画の場合は編集されたものだから、すべてがつながっているわけじゃない。これが舞台になると、プロローグから一つの流れとして積み重ねてきたものがありますし、さらにストーリー以前からの関係性も表れるんです。だからもっと形が崩れたり、熱くなったりすることがあって、そこが舞台ならではの魅力なのかな」
和田「特に通し稽古に入ってからは余計に面白くなりましたね。最初は成歩堂と御剣の対決という理解だったんですが、やっていくうちに、実は2人で真犯人を追い込んでいくような雰囲気になることがあるんです」
兼崎「そのタイミングが何となくわかるんですよね。この瞬間から御剣は敵じゃなくなった、っていう」
和田「2人の正義が合致するタイミングがあって、そういうのが見えるのは面白いと思います」