八木さんが清居になった瞬間を目の当たりにして驚いた
――現場でお二人を見ていて、演技以外で印象に残っていることはありますか。
お二人はすごく仲がいいんですけど、ただの仲良しではなくて、お互いをリスペクトし合っているんです。2人とも現場にはお芝居をしに来ているので、お互いを気遣って敢えて話しかけないようにしていることもありました。
シーズン1のときは徐々に仲良くなっていくところが見えていたのですが、今回はお互いの空気を読んで、プロの俳優として、言葉を交わさなくても平良と清居でいるための空間を作ってる姿が見られました。そこはシーズン1とは変わったところでもありますね。
あとは、シーズン1の3話の校舎裏でのキスシーンのときは、直前までずっとお二人で漫画の話をしていて。「今からキスシーンだけど大丈夫かな?」って思っていたんですけど、「ヨーイ」ってなった瞬間に、お二人の顔がパキって変わって。正直、「切り替え凄いな」って思いました(笑)。
お二人とも、その時の雰囲気によって敢えて話しかけないこともあれば、敢えてフットワークを軽めにして臨むときもあって、使い分けていらっしゃるんだと思います。
――監督から見た“俳優・萩原利久”“俳優・八木勇征”の魅力とはどんなところでしょうか。
萩原さんは物語の読み込みが凄まじくて、物語に入り込む、溶け込む能力がすごいです。その視点って、実は誰よりも優しかったり、繊細であったり、大人でもあり、子どもでもありながらでないとできないことなので、本当にすごいなと思っています。だから〇〇らしいというより、“萩原利久は萩原利久である、萩原利久だからこそできる芝居がある”という印象ですね。
八木さんも萩原さん同様、優しくて繊細なんですけど、何より素直なんですよね。素直であることを恥ずかしがらないので、思っていることが全部顔に出るし、言葉にも出るし、わかりやすい。だからこそ、キャラクターを掴んだら強いんです。
掴んだら脳で考えるよりも先に体に出てくる。それはなかなか手に入れられない力だと思います。鍛えたところで出るものではないです。八木さんが持っているもともとの人間性から来ているものだと感じます。
そこはすごく興味深いですし、他の役を演じたときにどうなるかが気になります。私は清居である八木さんとしか接したことがないので、そうでないときはどうなるのかが見てみたいです。
――八木さんが清居を掴んだ瞬間って明確にあったのでしょうか。
シーズン1は、明らかに最終話の化学室のシーンで爆発していました。八木さんが清居になった瞬間を目の当たりにして驚いたことをはっきりと覚えています。
――平良にこれまで抱いてきた想いをぶつけるシーンですよね。
そうです。何回か撮っているんですけど、何回やってもあんなふうに涙目になって。清居だなと思いました。